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帝国ホテル料理長とポーラ社長が語る個人の「will」を引き出すウェルビーイングな組織づくり

2024.05.09

社長の及川美紀氏自ら膝を突き合わせて社員と『グリーティング』

杉本料理長は『ラウンドテーブル』という形で調理スタッフたちの課題を吸い上げている。一方で、集団の中では個が出しづらいタイプがいたり、スタッフたちの評価や仕組みづくりが難しかったりと、現実の厳しさに直面したという。ポーラでは、『ラウンドテーブル』と同じく『グリーティング』のという形でヒアリングを行っている。

「わたしたちは『グリーティング』という言い方をしています。『あなたがどんな人で、何が大事で、どういうことに喜びを感じる人ですか』というのを、従業員ひとりひとりに丁寧に聞いていきます。私を含めた役員の皆さんが日本全国の事業所に行き、その個人がどういう人であるかを理解するところから始めます。そうすると初めて、『聞いてくれるということは、言ってもいいんだ』となる」

それでも、従業員が素を見せるまでには時間がかかるという。「社長の肩書を捨てて行っていても、相手は『評価する人だ』と思って接してくる。なかなか最初は仕事の話になりません。でも自己紹介から『こういうアニメが好きで、こんな歌手が大好きで、ライブ行って……』と、一見無駄なようだけれど、膝を突き合わせて話します。『そんなあなたが仕事で喜びを感じる時ってどんな時?』と解きほぐしていくと、『実はこんなことがやりたい』『実はここに居心地の悪さを感じている』『実はこんなことがあった』といったことが出ています。20分30分語り合った後に、やっと本題に入れます」と、何気ない会話から話を引き出す重要性を語った。

グリーティングは及川氏1人に対し、社員7人で行う。複数で実施することにも効果があるという。

「私とAさんがしゃべっている間にBさん、Cさんなど周りの人が『私もこんな風に思っていた』と、どんどんインスパイアされていく。ちょっと糸を引きながらやっていくと、どんどん意見が出てくる。それをやった後の目標設定のありかたが、『会社から言われたから目標を作る』ではなく、『自分がここまでやりたい』という“will”で目標が作れるようになり、上司もそれをサポートできるようになります。相手の『こうありたい』を引き出していくのはとても大事なプロセスです」

転職した社員も戻りやすい環境作り「おかえり」と迎え「留学に出している感じ」

社会や企業の理念の中での『個人の“will”』を重要視するポーラは、実は入社試験の段階から企業理念を伝え、応募者の“will”を見ているという。

「役員面接までの間に4回面接があり、1人40分時間をとります。そこで企業理念を一緒に語り合いながら、『うちはこういう目的のために美容の仕事をしている』と伝えます。最終面接は3分間のプレゼンで、例えばもうすぐ100周年なので『100周年までに実現したいこと』などを語ってもらい、ディスカッションします。すでに入社試験の間に(企業理念が)刷り込まれているんですね。そして、本気でうちの会社に来たい方は勉強して来てくださる。『学生時代に何をやっていたか』より、『未来で何をしたいか』が重要なので、個の“will”が面白そうなら採用だし、表面的ならごめんなさい。『“will”を持っているか』を見ています」

また、ジョブローテーションやチームビルディングにも力を入れ、ワーキンググループなども自発的に生まれているという。有志で勉強会を行うワーキンググループにはお弁当代を支給し、ランチしながらスタッフ同士が学び合える場を作っている。さらに、一度退職や転職した社員が復職しやすい環境も作っているという。

「『自分の成長したい姿、その後で表現したいこと』が違う中で、会社の中で実現できることもいっぱいあるはずなのに、『もうこの会社では自分のやりたいことができない』と思わせてしまう経営課題があります。でも、『やっぱりポーラで実現したいことがある』と思った時に戻れるように、『辞めてしまってもまた戻ってこれる環境』を作っています。一回外に出たけれど、『社風が好き、ポーラでやりたい』と思ってまた戻ってきた社員はパフォーマンスが高い。『いつでも戻っておいで』と送り出し、帰ってくると、『おかえり! よく帰ってきたね、ありがとう帰って来てくれて』と迎える。会社からすると留学に出している感じですね。そして、戻ってこなくても、『他の会社で当社を理解してくれている元社員がいる』というのは励みです」

このポーラの取り組みについて、自身も一度帝国ホテルを離れ、フランスに渡った経験がある杉本料理長は、「(ポーラを退職して)在籍していなかった時間は評価に値しますか」と質問。及川氏は、「そこはシビアに面接します」と語る。

「『次に行った会社が嫌だから戻って来る』というのは(受け入れ)ない。アウトプットを出してもらって、そこ(退職後に何をしてきたか)は見ます。人事部は、『なぜ戻ってきたのか』をインタビューしています」

杉本料理長は、「こういう取り組みであれば、今職場にいる人も『帰ってくる人がいるんだ』と感じるし、外に出た人も『恵まれていたんだ』と気づく。すぐにでも実践できそうです」と感心。及川氏が語るポーラの人材育成や組織作りに、「(帝国ホテルで)今やっている取り組みを『そのまま進めばいいんだ』というポイントを確認できたのと、『もう一歩先にいける』と明確になりました」とフォーラムを締めくくった。

取材・文/コティマム

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