償却負担が軽くなって黒字化しやすくなる?
GameWithの事業は大きく3つに分かれています。メディア、eスポーツとインターネット回線です。
メディアは売上全体の69.5%、eスポーツは24.8%を占めています。ほぼこの2つで占められています。
GameWithが大胆な一手を打ったのが、2021年10月のDetonatioNの買収。プロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming」を運営する会社です。このM&Aに総額2億5300万円を投じました。
今期大赤字となる主要因を作ったのが、この買収で生じたのれんの減損損失。実はDetonatioNは買収時の純資産が2100万円ほどしかなく、GameWithは2億円以上ののれんを積むことになったのです。
のれんの減損損失とは、当初期待していた収益性が得られないことが判明した結果として、買収で生じたのれんの価値を減価する会計処理をいいます。GameWithのケースを簡単に説明すると、eスポーツチーム運営会社を過剰なほど高値で取得してしまったため、本来の価値に見直した見返りとして大赤字を出す結果になったということです。
GameWithのeスポーツ事業はまったく利益が出ていませんでした。
■事業別EBITDA(EBITDAは営業利益に減価償却費とのれんの償却費を足し戻したものでキャッシュフローに近いもの)
※決算説明資料より
eスポーツ事業の売上は四半期単体で2億円程度。2023年5月期通期のeスポーツ事業の売上高は8億7000万円でした。しかし、2億円の営業損失を出しています。
この赤字にはのれんの償却費が含まれているため、減損損失を計上したことで償却負担が軽くなるのは間違いありません。
ただし、GameWithはDetonatioNを買収した際、合計で2億6800万円ののれんを計上していますが、これを5年で均等に償却するとしていました。1年あたりののれんの償却額は単純計算で5300万円ほど。今の赤字額を考慮すると、減損後も簡単に黒字化するのは難しいでしょう
オリンピック大会にもなったが知名度は依然として低く
eスポーツというと、数億円もの多額の賞金を目当てに世界中の選手が集まる華々しいイベントをイメージします。日本eスポーツ連合会は2022年の市場規模が前年比27%増の125億円に達したと発表しました(「2022年の国内eスポーツ市場規模が100億円を突破」)。2025年には210億円を超えると推定しています。
産業としても伸び盛りであり、eスポーツ専門商社GLOE(旧ウェルプレイド・ライゼスト)は2022年11月30日に新規上場しています。
また、国際オリンピック委員会(IOC)が「オリンピックeスポーツシリーズ」を設立し、2023年にはシンガポールで第1回の世界大会を開催しました。世界的にも注目を集めているのです。
しかし、日本では今一つ盛り上がり切らない印象があります。
GameWithのeスポーツ事業は、スポンサー収入が全体の27%、タイアップイベントが23%、大会賞金が33%、グッズなどの販売が17%を占めています。収益分散はできており、収入として不安定な大会賞金は3割程度に過ぎません。
費用として発生しているのは、選手に支払う固定給や、イベント・動画制作などにかかる外注費が大半。費用全体のおよそ7割を占めています。この分を圧縮するのは難しく、スポンサー収入やタイアップイベント、グッズの販売を伸ばして吸収するのが順当でしょう。
しかし、eスポーツというマーケットが盛り上がらないのであれば、いくら営業力を強化しても簡単に伸ばせるものではありません。
YouTuberやVTuberの鉄板の稼ぎ方の一つがゲーム配信。ゲームの実況動画は市民権を得たと言えますが、eスポーツ選手の動画配信に人気が集まっているかと言えば、まだまだといった印象です。
GameWithは主力のメディア事業が揺らいでいます。eスポーツ事業はそれを支えきるだけの力をまだ持っていません。今後、中期的に苦戦する可能性も十分考えられるでしょう。
取材・文/不破聡