次世代型発泡パウダーで素早く水に溶ける
『アタック ZERO パーフェクトスティック』に採用されている粉末洗剤のことを、同社では「次世代型発泡パウダー」と呼んでいる。既存の粉末洗剤とは処方設計が異なるうえに、エアーin構造と粒子のコーティングという2つの技術を採用しているからだ。
エアーin構造とは、パウダー内が空洞になっている構造のこと。以前から同社の粉末洗剤には採用されているものだが、水に触れると中の空気が弾け、効果成分が素早く溶けるという特徴がある。
次世代型発泡パウダー(イメージ)。中が空洞になっている独自開発のエアーin構造の粒子にコーティングを施している
ただ、実績がある技術とはいえ、洗剤をフィルムで包み、スティック状にギュッと詰め込むことから、粒子同士がくっつかないように粒子レベルでコーティングを施し、よりしっかり、素早く溶けるように進化させた。
コーティングと溶けやすさの関係について、井上さんは次のように説明する。
「冬場のような水が冷たい時に洗濯すると、普通の粉末洗剤だと粉末同士が反応してくっついてしまうことがあります。粉末洗剤で溶け残りが発生することがあるのは、粒子同士が冷たい水によってくっついてダマになるためです。そこで、粒子がくっつくのを防ぐコーティングを施してダマにならず素早くしっかり溶けるようにしました」
処方面で従来の粉末洗剤と大きく異なるのが、臭いの原因となる菌の増殖を抑制する抗菌効果を持たせたこと。「これまでの粉末洗剤は抗菌効果を付与させることが難しいものでした」と井上さんは明かすが、エアーin構造に様々な成分を浸透させるに当たって他の成分との最適なバランスを見つけて実現した。
粉末洗剤を包むフィルムについては、溶けやすいか?保存時の安定性に問題はないか?といった観点から選定。洗濯機によって注水タイミングが異なるので、様々な洗濯機を使って検証した。井上さんは次のように振り返る。
「花王の粉末洗剤はエアーin構造を採用し溶けやすさを意識したものになっていますが、スティック状に成型しフィルムでコーティングしてもきちんと溶けて効果を発揮するかということには神経を使ってきました。そのために粒子レベルで特別なコーティングも施したほどです。満足して使ってもらえるものにするため、品質評価は繰り返し何度も重ねてきました」
形状についても、当初はキューブなど様々なものが検討された。スティック形状が採用されたのは、表面積が大きく水流の影響を受けやすいため。より短時間でフィルムが素早く溶け始めてくれるというわけである。
スティックは他の形状より衣類に絡みやすいという利点もあった。衣類に絡むことで摩擦を受けやすくなり、素早く溶けることが期待できた。1本でドラム式洗濯機だと2kg~6kgの洗濯物、縦型洗濯機だと30L~65Lの水量に対応する。
セーフティロック式ジッパーで誤飲防止
『アタック ZERO パーフェクトスティック』はコンパクトなチャック付きのパウチ包装パッケージを使っている。ただ、チャックはありふれたものではなく、セーフティロックがついたやや特殊なもの。一度覚えてしまえば楽だが、開ける時にコツがいるものになっている。
切り口を切り取ると、一般的なチャック付きのパウチ包装パッケージには見当たらない赤線入りのタブが現れる(YouTubeチャンネル KaoJapan「花王アタックZEROパーフェクトスティック 袋の開け方 動画広告より」)
このようなパッケージを採用することにした理由を、井上さんは次のように説明する。
「できるだけ環境への負荷を削減するために、プラスチックの使用量を削減したいという想いから、チャック付きのスタンド袋を採用することを決めました。ただ心配なのが、小さな子どもや認知症の高齢者の誤飲です。簡単に開けられないようにする対策として、包材メーカーからセーフティロック式ジッパーを提案いただきました」
包材メーカーからは他にも提案を受けたが、小さな子どもは簡単に開けられず大人なら比較的すんなり開けられるものとして一番バランスの良かったものが、セーフティロック式ジッパーを採用したスタンド袋だった。
開ける時は、タブと袋のオモテ面(ジッパーがついていないほう)を一緒につまんでから袋のウラ面を持って開ける(YouTubeチャンネル KaoJapan「花王アタックZEROパーフェクトスティック 袋の開け方 動画広告より」)
トライアル獲得を意識した戦略的な価格設定
新しい剤型であることから、販売のカギを握ったのはトライアルを多く獲得することだった。広く知ってもらうためにテレビCMを放映したほか、手に取ってもらうべく、トライアルしやすい少量の7本パックで価格を抑えることにした。
「販売面ではまず、多くのトライアルを獲得することを心がけました。テレビCMを大量に放映した発売時は、7本入りの販売価格を戦略的に抑えています」と井上さん。トライアルは目標近くのところまで獲得できており、売れ行きの約7割が7本入りだという。
逆に中容量タイプの24本入りや大容量タイプの51本入りは年末頃から販促を強化。小売店と連携し、商品がまとめ買いされる年末にこれらの容量の割引クーポンを発行したり、店頭で少量タイプよりも数を並べてもらい目立つようにしたりした。トライアルで気に入った人たちがリピートしてもらいやすいよう、販促の強化時期をずらした形だ。
『アタック ZERO』から流れてきたユーザーもある程度いる一方で、すでに他社のワンショット型洗剤を使っていたユーザーから乗り換えた人も見られる。便利さを実感している人たちの興味関心を惹きつけることができた。
また、ワンショット型のユーザーからは部屋干しニーズが高いことから、2024年3月に『アタック ZERO パーフェクトスティック 部屋干し』を発売。部屋干しパワフル消臭技術を搭載し、部屋干し時に気になる生乾き臭を解消した。
2024年3月に発売された『アタック ZERO パーフェクトスティック 部屋干し』。こちらも7本入り、24本入り、51本入りの計3種がラインアップされている
「共働きなどで忙しいと洗濯が夜になったりすることから、部屋干しのニーズは高いです。部屋干しされる方にも便利さと高い洗浄力を実感していただきたく、部屋干し用を追加することにしました」と井上さん。楽であること、高い洗浄力、抗菌性能はそのままに、消臭実感が得られるようにした。