洗濯物の量に合わせて洗剤を計量するのは面倒。こんな面倒を解消するために生まれたのが、「ワンショット型」とも呼ばれる計量不要の洗剤だ。
花王が2023年8月に発売した洗濯洗剤『アタック ZERO パーフェクトスティック』もワンショット型。ただ、先行する同タイプの洗濯洗剤と違うのが、粉末洗剤をスティック状にしてフィルムでコーティングしたこと。そのまま洗濯機に投入し注水すると発泡して素早く溶け広がり、効果成分が汚れに作用する。洗浄力は同社の液体洗剤よりアップしている。
発売から約4か月半の出荷実績は1億本超。同期間における『アタック』ブランド全体の売上が対前年比で112.4%と2ケタ増になる原動力となった。
写真は7本入り。このほか24本入り、51本入りと計3種がラインアップされている
圧倒的な洗浄力を持つワンショット型の開発
同社によれば、共働き世帯の増加などから、洗濯を楽にしたいというニーズが日本に限らずアジア各国などでも高まり、ワンショット型の洗濯洗剤は市場が拡大している。
花王
ファブリックケア事業部
シニアマーケーター
井上直子さん
しかし、ファブリックケア事業部 シニアマーケーターの井上直子さんによれば、洗濯洗剤に簡便性を求める人の中には次のような不満を覚えている人がいるという。
「洗濯が楽になる洗剤を選びたいという人の中で汚れ落ちに不満を感じている人が3割ほどいることが、当社の調査でわかりました。汚れがヒドい時に前洗いやつけ置き洗いをしている方もいました。とくに子育て世代は子どもの服が汚れやすいことから、こうした使い方をされている方が割と見られました」
洗濯を真に楽にする洗剤を、同社は計量を不要にすることに加えて圧倒的に高い洗浄力も有しているものだと定義。2019年から検討を開始し、約4年かけて商品化した。
洗浄力を高くしやすい粉末洗剤を採用
『アタックZERO パーフェクトスティク』で粉末洗剤が選ばれたのは、高い洗浄力を実現できるからであった。井上さんは次のように話す。
「襟や袖にこびりつく皮脂汚れには脂肪酸が多く含まれています。そして、この脂肪酸にはアルカリが高い効果を発揮します。洗濯で注水した時の水がアルカリ性であるほど洗浄力がアップしますが、液体洗剤はアルカリ剤を安定的に高濃度で配合することが難しいという課題があります。これに対し、粉末洗剤はアルカリ剤を多量に配合しやすく、洗濯水の液性をアルカリ性に近づけやすい特長がありました」
『アタック ZERO パーフェクトスティック』の液性は弱アルカリ性。液体の洗濯洗剤の中にも液性が弱アルカリ性のものはあるが、洗濯水そのものを弱アルカリ性に変えることができるという点においては、アルカリ剤を高濃度で安定的に配合できる粉末洗剤のほうが有利であった。