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空港、タクシー、警察も!民間企業や行政機関が本気で取り組む「カスハラ対策」最前線

2024.05.02

タクシー大手「日本交通」に聞いたカスハラ対策の真意

民間のみならず、行政の現場でも広がりを見せるカスハラ対策。中でも仕事柄、密室空間での対応が余儀なくされるタクシー業界も強気な姿勢を見せている。

昨年末、タクシー大手の日本交通が運送約款を一部変更し、カスタマーハラスメントに関する項目を明記した。抜粋して紹介しよう。


〈カスタマーハラスメント行為に対して〉

旅客の当社の運転者に対する法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反する行為(本条において、カスタマーハラスメント、セクシャルハラスメント、モラルハラスメントその他の旅客の発言、行動等が旅客の意図には関係なく、当社の運転者を不快にさせ、尊厳を傷つけ、不利益を与え、又は脅威を与える行為(以下、『ハラスメント』という。)をいう。)を差し控えていただきます。

ハラスメントがあった場合、運転者はハラスメントの中止を求め、旅客がこの求めに応じない場合には、運送の引受け又は継続を拒絶する他、運転者又は当社の判断において警察等へ通報します。また、ハラスメントにより生じた損害の賠償および、慰謝料を請求します。


今回、カスハラ対策に踏み切った経緯を日本交通社長室・秘書広報室の土屋真吾氏に聞いた。

「近年、カスタマーハラスメントが社会問題化しており、乗務に不安を感じる社員の声が増えてまいりました。この度、そういった行為が発生した際に毅然と対応できる体制を整えるために運送約款を変更致しました。具体的には、「旅客の当社の運転者に対する法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反する行為」の中に「カスタマーハラスメント」の文言を加えています」

――タクシー業界でのカスハラは増えているのでしょうか?

「業界での明確なデータには持ち合わせがないため、増減については何とも申し上げられないのですが、社会的に問題化され度々議論されるようになってか、やはり在籍社員、もしくは応募者からは不安の声も多少聞かれておるところです。過去にはカスタマーハラスメントに類する事案によって、残念ながら乗務員のモチベーションに影響してしまった事例もありました」

■車内カメラ、SOS通報システム…従業員の安心安全へ

毅然とした態度でカスハラから社員を守ろうとしている日本交通。約款の変更以外に行なっているカスハラ対策について伺った。すると、以下のような対策を講じているという。

(1)車内カメラの設置

従前が室外カメラのみでしたが、2013年より室内カメラ機能も持ったドライブレコーダーに交換しております。

(2)カメラ存在の強調

カメラ作動中であることを表示する電光掲示板を取り付け、2023年12月1日より本格運用を開始しました。車内カメラの設置については車窓部分のステッカーにてお知らせしていましたが、認知が広がっていないケースもあり、より車内カメラの存在を強調すべく取り付けているものです。

直営事業所および直系子会社の都内(東京23区、武蔵野市、三鷹市)タクシー車両約2,800台へ装備を完了する予定です。

(3)SOS通報体制の構築

弊社車両装備のドライブレコーダーには、万が一の事態が発生した際、乗務員が操作を行うことでSOSを発信することができ、配車センターと運行管理者に対して警報及び、車内の様子を映した映像が届く仕組みになっています。運行管理者は必要に応じて110番通報を行うなど、迅速な対応に繋がります。

(4)接客マニュアルの徹底

乗務員に対しては平時の接客マニュアルを徹底、指導しています。

接客品質向上はもちろん、カスハラを含めたハラスメントや犯罪行為をさせるような隙を与えず、事案を防止する意味合いがございます。

主に新任乗務員の接客研修にて上記の旨を指導し、平時のロールプレイング等で、いつでも励行できるよう取り組んでいます。

(5)品質向上講習の実施

お客様相談を受け付ける部署「カスタマーサポートデスク」が主体となり、月に1回程、タクシー営業所を訪問して乗務員向けに「品質向上講習」を行っています。

この講習ではミスをした際の対応等だけでなく、お客様への向き合い方やメンタルコントロールについてレクチャーすることで自信喪失の防止にも努めています。

――東京都もカスハラに関する条例制定を表明しましたが、国や自治体に期待することは?

「期待についてはコメントする立場にございませんが、従業員を守り、安心して活躍できる環境を整えるべく今後も取り組んでまいります。そのような中で行政がこのように動いてくださっていることは、心強いと考えています」

まとめ

企業などに対する不当な嫌がらせは、時に個人攻撃にもなり、パワハラやセクハラよりも経験している人が多いと言われている。あなたの勤務先は適切な対策を講じているだろうか?これからの時代、対岸の火事では済まされない事態に陥るかもしれない。

取材協力
日本交通株式会社

文/太田ポーシャ

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