日本:株価は高値更新も先行きには不透明感、海外事業要員募集は職種が多様化
<国内情勢>
日経平均株価は2月に34年ぶりの高値を記録した後も上昇を続け、3月には40,000円台を記録した。また円安の影響もあり2月度の輸出額は前年比で7.8%増加し、3ヵ月連続の増加となる。内需に目を向けると、多くの企業で賃上げが発表されたほか、2月の訪日外客数が前年比で89%増えるなど、非製造業にとって明るい材料も増えている。
一方、高騰が続いていた企業物価指数はここへきて落ち着きをみせているが、4月から始まる運送業、建設業における労働時間の上限規制がコスト上昇の要因となる可能性があるほか、人手不足により減産を余儀なくされた製造業で輸出にブレーキがかかる恐れもある。
<企業の採用動向>
2024年2月のパートを除く有効求人倍率は1.31倍。3ヵ月前の2023年11月の有効求人倍率1.33倍からは0.02ポイント低下しているものの、依然として高水準だ。
2024年1~3月期に当社に寄せられた日系海外事業要員の新規求人数は、前期比92%と減少した。大企業では、完成車メーカーや自動車の1次サプライヤーから新エネルギー車関連の求人や、グローバル化が進むヘルスケア業界からも多くの求人が寄せられた一方、中小企業からの求人数には依然として伸びが見られない。
海外駐在要員の募集に限ると昨年の10~12月からさらに増加し、前年同時期に比べ174%と伸びた。自動車・機械部品メーカーで中国やタイなどアジアの既存生産拠点の人員の交替要員を求めるものが多いほか、地政学リスクに対応するためのサプライチェーン見直しをミッションとする求人も目立つ。
また地域別では欧州、中南米、中東など、いっそう多様化している。その他、グローバルでの人的資本管理や組織のグローバル化を目的とするグローバル人事の募集、海外拠点のガバナンスの強化を目的とする監査やERP(統合業務システム)導入の要員を求める募集も活発だ。
<求職者の動向>
1~3月期の海外勤務経験を有する新規求職者数は、前年同期比で122%と大幅に増加。前期比でも118%と増えた。人材の流動化を奨励するような報道や広告物も多く、また転職をした人の中で実際に年収が増加した人の割合が増えていること、さらには外部人材を獲得するために報酬制度や福利厚生、働き方の見直しを行う企業が積極的にそれを訴求していることから、転職に対する関心や意欲は高まっている。
JAC Recruitment海外進出支援室室長チーフアナリスト
佐原賢治氏
●JAC Recruitment概要
●JAC Recruitment転職サイト
全体総括:JAC Recruitment海外進出支援室室長チーフアナリスト佐原賢治氏
アジア各国の中途採用市場は、暦や宗教行事の影響による短期的な求人・求職の増減を除いて概ね安定的で、一部の国を除いて前期比10%前後の伸びとなった。
モビリティ関連を中心とする成長分野では各国現地企業のほか欧米系、アジア系の外資企業との人材獲得競争で日系企業が苦戦を余儀なくされる状況にも変わりがない。日系企業では、本社から派遣される駐在員の代替要員などマネジメント人材の需要が高まっており、競合他社に対抗するためには、魅力的な報酬、責任と権限の明確化に加え、日本本社を含めた採用の意思決定スピードも求められる。
構成/こじへい