マレーシア:経済成長に伴い労働市場も順調な回復へ
<国内情勢>
2024年1~3月期のマレーシア経済は好調で、ASEAN地域全体の成長予想を上回り、有望視されている。GDPは5%成長すると予測されており、これはASEANの予測値4.8%を上回る。マレーシアは進行中の半導体ブーム、米国製品への旺盛な消費、旅行やサービスに対する高い需要といった要因のおかげで、ASEANにおける経済成長のリーダー的存在となっている。この成長率予想は、マレーシア中央銀行の予想とほぼ一致しており、来年の経済の見通しが明るいことを示唆している。
2024年のインフレ率は2.5%と安定しているものの、政府が補助金の支給方法を変更する予定であるなど、潜在的なリスクに対する懸念がある。さらに、商品価格の世界的な変動、中国経済の低迷、米国大統領選挙をめぐる不確実性など、マレーシアの成長にとって課題となりうる外部要因も懸念される。しかし、マレーシアは半導体売上高の増加による恩恵を受け、来年末までにピークに達すると予想されている。
<企業の採用動向>
マレーシアの雇用市場は回復の兆しを見せ、失業率は3.3%と低水準で推移し、雇用者数は昨年比2%増と着実に増加している。2019年のパンデミック前の平均よりは少し高いが、失業者数は昨年より5%近く減少し、2024年1月には56万7000人となり、改善に向かっている。
雇用形態別に見ると、企業に勤める従業員が約75.2%と大半を占め、前年比で約1.3%増加しているのは興味深い点だ。このような雇用市場の健全化は、個人の就職に有利なだけでなく、個人消費にも弾みをつけ、ひいては今年の経済成長の下支えとなりそうだ。さらに、2024年1月のマレーシア国内の求人件数は約94,100件まで回復しており、新たな機会を求めている人々にとって状況は好転している。
<求職者の動向>
求職者は活発化する転職市場に対して積極的にアプローチをしている。ダイナミックに変化する環境に適応し、求められる人材として競争力を維持するためには継続的な学習とスキル向上の必要性があると考えている。
さまざまな教育コースやワークショップの受講、新しいソフトウェアプログラムの習得など、スキルセットの幅を広げる手段を具体的に検討している。スキルアップやリスキリングの機会を積極的に求めることで、求職者は専門的能力を高めるだけでなく、個人の成長や自身の能力開発に投資していることがアピールポイントにもなる。
JAC Recruitmentマレーシア法人社長
ニック・テイラー氏
●JAC Recruitmentマレーシア概要
●JAC Recruitmentマレーシア転職サイト
タイ:国内の内需回復に期待、駐在からの切替えポジションのニーズは継続中
<国内情勢>
2023年通年のGDPは輸出の不振、消費回復の鈍化などが響き、2022年の成長率2.6%から減速し、最終的に1.9%となった。タイ国家経済社会開発委員会は2024年のGDP予想値を前回予測の2.7~3.7%から、2.2~3.2%に下方修正している。2024年は消費を中心に内需は回復すると予想されるも、ペースは緩やかなものになる見込み。観光セクターにおいて、タイ政府は外国人旅行者数の目標を2023年の2,810万から2024年は3,500万人に押し上げ、景気回復を目指している。
<企業の採用動向>
引き続き、日本人の現地採用求人数は増加しており、求人傾向としてはビジネス拡大のための増員募集よりも欠員補充理由が多くなっている。それら多くの求人は駐在員の代替ポジションとして、MD・GM・Managerといったハイクラスポジション、製造現場の責任者、またはASEAN・その他海外エリア等への新規顧客開拓の営業統括等のポジションのため、豊富な経験や高いスキルが必要とされている。
多くの企業が現地採用でこれらのハイスキル人材を求める背景としては、本社側での駐在員候補者が豊富ではなく、人員構成上、駐在員を派遣できない状況にあるため。駐在員に係るコスト削減を進める企業もあり、駐在員からの切り替え目的での現地採用ニーズは今後も継続すると見込んでいる。
<求職者の動向>
駐在員の代替ポジションとしてハイクラス人材を探す企業が増えてきている中、元駐在員の方でタイでの長期的な生活を希望される求職者が増える傾向にある。特に40~50代以上で、英語、もしくはタイ語を日常会話レベルで話すことができ、豊富な経験、高い専門性、または製造に関する技術や知見を生かし、即戦力として会社成長に貢献できるクラスの人々だ。
JAC Recruitmentタイ法人社長
ガヴィン・ヘンショー氏