税理士・菅原由一氏が解説 する「給与明細の見方と確認すべき項目」
企業によって異なりますが、毎月25日を給料日と定めているところが多いため、4月25日に初任給をもらう新入社員は多いと思います。そこで、今回は「給与明細の見方と確認すべき項目」について解説します。
■基本給・額面・手取りの違い
・基本給
各種手当やインセンティブなどを含まない、会社から毎月固定で支払われる金額です。
・額面
基本給に各種手当やインセンティブなどを足した、会社から支払われる総額です。
・手取り
税金や社会保険料などを天引きした上で支払われる金額。つまり、実際に会社から受け取れる金額です。「額面(総支給基金額)」-「税金や社会保険料などの控除の合計額」=「手取り」となります。
■給与明細で確認すべき3つの項目
・控除項目の確認
給与から差し引かれる税金や保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料など)が正しく計算されているかを確認しましょう。
・手取り額の確認
実際に、自分の銀行口座に振り込まれる金額である手取り額が、適切に計算されているかを確認しましょう。
・支給日と締め日の確認
給与が支給される日(支給日)やその期間の日数を基準とする日(締め日)が、適切に記載されているかを確認しましょう。
■社会保険料は何を元に引かれているのか?
社会保険料は、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・介護保険料(※1)・労災保険料の5つの保険料から構成されています。
これらの保険料は、従業員の給与や報酬に応じて一定割合で引かれます。具体的には、標準報酬月額(※2)や基本給などを基にして、各種保険料率が適用され算出されます。
(※1)40歳になった誕生月から介護保険料の納付義務が生じます。
(※2)標準報酬月額とは、毎月の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料)を計算する際に基準となるもので、標準報酬月額を算出するにあたり、対象となる報酬とならない報酬があります。また、健康保険料と介護保険料は1~50等級、厚生年金保険料は1~32等級に区分され、等級が上がるにつれ、支払う保険料も上がります。
・健康保険料
健康保険は、労働者やその家族が病気や怪我の際の医療費をカバーするための制度です。健康保険料は、標準報酬月額に保険料率を乗じた金額で計算され、保険料率は会社や地域によって異なります。
・厚生年金保険料
厚生年金は、労働者が老齢や障害、死亡などの際に年金を受給するための制度です。厚生年金保険料も健康保険料同様に、標準報酬月額に保険料率を乗じた金額で計算されます。
・雇用保険料
雇用保険は、労働者が失業した際に一定期間生活を維持するための給付を受けるための制度です。雇用保険料は、雇用保険料率を給与額に乗じた金額で計算され、業種によって異なる料率が適用されます。
標準報酬月額の対象となる報酬は、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを含みます。また、金銭(通貨)に限らず、通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも報酬に含まれます。
但し、臨時に受けるものや、年3回以下支給の賞与(標準賞与額の対象となります)などは、報酬に含みません。(例:賃金、給料、俸給、賞与、インセンティブ、通勤手当、扶養手当、 管理職手当、勤務地手当など)
一方、事業主が負担すべきものを被保険者が立て替え、その実費弁償を受ける場合、労働の対償とは認められないため、「報酬等」に該当せず、標準報酬月額の対象とならない報酬となります。(例:出張旅費、赴任旅費など)
また、事業主が恩恵的に支給するものも労働の対償とは認められないため、原則として「報酬等」に該当せず、標準報酬月額の対象とならない報酬となります。(例:見舞金、結婚祝い金、餞別金 など)
■「4月から6月に働きすぎると損する」って本当?
4月から6月に働き過ぎて給与が上がると、社会保険料が上がる可能性があります。
社会保険料は標準報酬月額に基づいて算出され、標準報酬月額は毎年4月から6月に支払われた給与の平均額で1年間の社会保険料が決められます。
この3か月間に働きすぎて残業代が多かった場合は、その分支払う社会保険料が増える可能性があるため、9月もしくは10月からの手取りが減ってしまうこともあるのです。但し、給与の変動があった場合、途中で標準報酬月額が変動することもあります。
■住民税について
住民税は、居住している(住民票を置いている)市区町村に納める税金で、社会人2年目の6月の給与から課税されます。また、住民税は、その年の1月1日に居住していた(住民票を置いていた)市区町村で課税することになっています。
■給与明細は取っておいた方がいい?
給与明細は、自身の収入や支出を管理する上で非常に重要な書類ですので、取っておくことをおすすめします。
給与明細には、支給額や控除額などが記載されており、将来の確認や証明のために保管しておくことで、必要な時に役立ちます。また、給与明細に誤りがあった場合にも、訂正や補足のために必要となることがありますので、大切に保管しておくことが重要です。
構成/Ara