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AIから守られるべきものは何か?生成AI利用イベントを中止に追い込んだキャンセルカルチャーの問題点

2024.04.19

TOKYO2040 Side B 第32回『AIから守られるべきものは何か』

 最近、生成AIに関連して、耳を疑うようなニュースがありました。

【関連記事】
「AI脚本」を人気声優が朗読…銘打ったイベントは中止、「盗作」と批判相次ぎ : 読売新聞(読売新聞)
“脚本に生成AI利用”の声優の朗読劇が中止に 「関係者に多大なる迷惑が掛かる危険がある」(ITmedia)

 このニュースを読む限りでは「生成AIの利用を根拠として、市民が表現の自由を差し置いて圧力をかけ、イベントを中止に追い込んだ」ということになります。また、関係者に迷惑が掛かる危険があるということは、もし上演されていた場合、主催者にとどまらず演者などにもそのような圧力がかかり続ける環境が現にあると読み取ることができます。

 嫌がらせの規模は記事からだけでは計り知れませんが、ネットリンチの流れが生成AIをターゲットにした、ということに間違いはないのでしょう。

 私は小説家なので当然創作をしますし、生成AIも日常的に使っているため、生成AIと人間の持つ権利を巡っての議論の方向は大変気になっています。今回はその動向を整理しながら、AIと創作文化、そしてキャンセルカルチャーについて考えていきたいと思います。

生成AIと著作権

 この2月に文化庁における「AIと著作権に関する考え方について」の公表以降、イラストや文章、音声・音楽の分野を中心として、生成AIに反対する「反AI」と、その言説や行動に異を唱える「反・反AI」の議論に拍車がかかっていて、SNSを中心に話題は尽きません。

【関連記事】
AIと著作権に関する考え方について(文化庁、PDF)
文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第7回)(文化庁)

 寄せられたパブリックコメントも公開されています。個別の詳細は上記リンク先のPDFをご覧いただきたいのですが、個人からのパブリックコメントに、どうにも何らかの決めつけを基にして表層的な内容と整理のつかない感情をないまぜにして投稿したのではないかと思われるものが散見されるのが気になります。

 本コラムでは、以前からAIの登場にまつわる人々の不安に寄り添うつもりで記事を書いてきました。

【関連記事】
今、必要なのは人間から仕事を奪うAIではなく、人間が仕事をしやすくなるAI|@DIME アットダイム
「AIを知ることは己を知ること」ChatGPTへの不安に振り回されないための意識改革|@DIME アットダイム

 しかしながら、不安ゆえの行動か直接の関係者でないところからの義憤かはわかりませんが、実際に著作権法をはじめとした法規に我々の何が守られているのか、守られた上で生成AIによる出力物がどういう位置づけにあるのかを知らないまま、反AIを叫んだり、あろうことか冒頭のニュースのように他者の表現やビジネスを阻止しようとする動きがあり、これは正道ではないと感じます。

 明確な盗作や剽窃といった、著作権法違反ではないというところも、反AI論調の危うさを感じる一端となっています。

 この著作権と生成AIの関係については、文化庁から大変わかりやすい資料が公開されています。著作権とはそもそも何なのかということが前半で学べますし、後半では生成AIと著作権の考え方について記されています。「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」を混ぜることなく、生成AIそのものについても学習や生成の構造が図示されているので、混乱することは無いはずです。

 今後私たちが課題とすべき点も見えてくるので、先述の「AIと著作権に関する考え方について」とともに、現段階で最良のテキストと言えるでしょう。

【関連記事】
令和5年度著作権セミナー「AIと著作権」の講演映像及び講演資料を公開しました。(文化庁)

 一般市民にとって生成AIの仕組みを理解することも難しいですし、著作権法というのも難しいものです。官公庁がこのようにわかりやすい資料を無料で読めるように用意していることは、無用に外野が争いを始めないためにも重要なものです。

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