上司・同僚・相談窓口など社内に助けを求めても59.1%が「解決しなかった」
さらに、パワハラを受けたとき前出のような対処をした結果どうなったか聞いたところ、59.1%が「解決しなかった」と回答。「解決した」と答えた人は12.0%に留まった。
前出の回答では、上司(31.9%)、同僚(27.0%)、相談窓口(14.1%)に相談した人も一定数いたが、結果として解決に至らなかった人が半数を超え、解決した人は1割程度という状況が明らかになった。
「解決しなかった」と回答した人にその理由を聞いたところ「本人がやっていないと言い張ったため」(30代・女性・事務)、「本人が深刻さを理解しておらず、改善が見られなかった。パワハラは性格の問題で、悪意はないと言われたから」(30代・女性・カスタマーサポート)など、加害者の無自覚ゆえ、解決に至らなかったとする意見が多数寄せられた。
また、「加害者には誰も歯向かえなかったから」(40代・女性・管理系)、「社長がパワハラを行なった人物を重用していたため」(30代・男性・営業)など、職務上の地位の高さが解決の壁となったという意見も複数あった。
ほかにも、「パワハラ被害を訴えたが上司が握りつぶしたから」(30代・女性・管理系)など、パワハラにパワハラを重ねるような状況も起こっているようだ。
そのほか、「担当部署が詳細を聞かずに放置したから」(40代・男性・公務員)、「話を聞くだけでそれ以上の対応はなく、我慢するしかなかったから」(30代・女性・管理系)など、そもそも勤務先に取り合ってもらえず、相談体制が機能していないというケースも散見された。
さらに、「解決前に退職したから」(30代・女性・事務)、「今も続いているので、そういう会社体質なのだと思い転職しようと思っている」(40代・女性・管理系)という意見もあり、パワハラがキャリア形成に影響を及ぼしている事例もあることがわかった。
■パワハラ被害者の82.5%が「転職を検討、転職した」
続いて、パワハラを受けたと回答した人全員に、パワハラが理由で転職した経験はあるか聞いたところ、「転職した」(38.6%)、「転職を検討した/検討中」(43.9%)が合わせて82.5%に達した。
前出の回答では「パワハラが解決した」とする人は12.1%に留まったが、勤務先での解決は諦め、転職により解決を図ろうと考える人が多いのかもしれない。
■パワハラを受けた88.2%が「被害がキャリア形成の支障となっている」
パワハラを受けたと回答した人全員に、パワハラは自身のキャリア形成に支障をきたしたと思うか聞いたところ、「かなりそう思う」(62.6%)、「ややそう思う」(25.6%)が合わせて88.2%となった。
■相談窓口や社内研修など対策を講じている勤務先は44.3%
対象者全員に、勤務先(または直近の勤務先)でパワハラ防止に関する取り組みが行なわれているか聞いたところ、「はい」と回答した人は44.3%と半数未満だった。
2022年の調査時は35.0%だったが、その後中小企業にもパワハラ防止措置の義務化が適用され、2023年の調査時には47.4%に上昇。しかしながら、それ以降大きな変化がないことがわかった。
具体的な防止策を聞いたところ(複数回答可)、「相談窓口の設置」(84.3%)、「社内研修の実施」(59.0%)、「定期的な社内アンケートの実施」(35.8%)、「社外研修の実施」(11.3%)、「その他」(5.5%)という結果が得られた。
パワハラ防止策は61.5%が不満足、防止策の形骸化・効果のなさを問題視
「勤務先でパワハラ防止の取り組みはある」と回答した人に、その防止策に満足しているか聞いたところ、「まったく満足していない」(27.0%)、「あまり満足していない」(34.5%)が合わせて61.5%と、不満足という回答が半数を大きく超えた。
防止策に満足していない理由を聞いたところ、「形だけの研修をしているため中身がなく、何の役にも立っていない。相談窓口も形骸化しているから」(20代・女性・医療)など、防止策の無力さを問題視する意見が多数挙がった。
そのほか、「相談窓口の担当者がほかの社員に情報を漏洩させた」(40代・女性・事務)、「匿名での投稿ができなくなってしまい、きちんと機能しているとは思えないから」(40代・男性・クリエイター)など、プライバシー侵害にまつわる事例も複数あり、相談窓口を利用することで、かえって被害者自身が不利になる事例も見られた。
■86.7%がパワハラ防止策の取り組みの実施を希望、第三者機関の介入や相談窓口の設置を望む声
勤務先はパワハラ防止に取り組んでいないと回答した人に、取り組みの実施を希望するか聞いたところ、「かなりそう思う」(63.6%)、「ややそう思う」(23.1%)が合わせて、86.7%が「希望する」と回答。
「かなりそう思う」が過半数であることからも、取り組みの実施は急務だと認識している人が多いことが推察できる。
具体的には、「第三者に相談できる仕組み作り」(30代・女性・医療)、「匿名での報告と外部の相談窓口」(30代・男性・システムエンジニア)など外部機関の介入や被害者が守られる仕組みを求める意見が多数挙がった。
また、加害者の無自覚さを問題視する声が多かったことからも、「知らず知らずのうちに加害者側になることもあるので講習での徹底周知」(40代・男性・製造)など、日頃から勤務先全体でパワハラ防止への意識や知識を向上させたいという意見もあった。
調査概要
調査内容/ビジネスパーソンのパワハラ被害の実態について
調査機関/自社調査
調査対象/同社を利用している全国のビジネスパーソン(20~40代・男女)
有効回答/661人
調査期間/2024年3月13日~3月21日
調査方法/インターネット調査
関連情報
http://www.workport.co.jp/
構成/清水眞希