創るプロセスを楽しめる映画創り
キックオフイベントの後に30分ほど三池崇史監督に単独でインタビューする機会をいただいた。1960年生まれの監督はAIをどう受け入れているのか。
「営業の現場の人にAIは敵に見えると思います。なんかもったいないなと。仲間として手懐ける必要はないけど、互いに何か磨けるんじゃないかなという気はしてる。だから、AIと共に創る。まず、こちらから発信しないと答えをくれない。面白いのはそのレスポンスの早さ、こちらの予想外の候補もどんどん提示してくる。より具体的に模索できます。例えばライティングはレンブラント調にしてくれる、とかにも瞬時に反応してくれる。すごく参考になります。取り入れるのも捨てるのも、最後の選択は人間がすることで互いの関係性が保てると思います」
AIはバイオレンスとか残酷描写なども出来るのでしょうか?
「それはどんどん難しくなるかもしれないですね。暴力的なことには早くもAIに規制がかかっています。まあ、それは小さなコトですが。アメリカは宗教上の建前から描けないシーンがありますが、日本にはあまりありません。その代わりに日本ではポルノに対してボカシが入るとか違いがあります。違いは当然ありますから、アメリカやヨーロッパから見ると、こんな表現よく許されるんだというのをもっとやればいいんです」
AIにも人間がやっている自然なアクションを生成できますか?
「それにはもう少し時間がかかると思います。本当に自然に見せたいなら人間がやればっていう話になりますよね。CGというのは訓練が必要ですが1コマ1コマ作業して人間が表現しやすいし、カースタントなどにも応用が効きます。実写かどうか分からない世界を創るのにCGはいいんですが、AIでは根本的に進んでいる方向が違うと思います」
今回の作品に活かすのは難しいでしょうか?
「10年ぐらいはまだまだ難しいでしょう。逆に言えば、我々、制作者側がこれが映画だと縛られている。無意識のうちに自分の中にルールを作っているものを簡単に壊してくれる可能性がありますね。このシーンとこのシーンをつないでも平気なんだって。途中でちょっとキャラクターが変わっても、あまり問題ないよねとか。僕らのルールから逸脱してるけど、これ見せたら面白いなっていうのが出てくる可能性は高いですね」
最初はCMぐらいの長さか、5分から10分ぐらいの作品を予定されていますが長編は難しいですか?
「集まってもらった方たちにギャラを支払える仕組みを考えたい。大学のサークルじゃないのでノーギャラというわけにはいかない。今日、来られた方の中には助監督の人もいました。他の方も本業があって、副業でやっている。副業の人たちが集まって、とんでもない作品が出来上がるってなんか楽しいじゃないですか。それができる場所、発表する場所は、長い作品だと間尺に合わない。創り上げて仕上げるのに2~3ヵ月はかかります。出来上がる頃にはもう古い。もっとレスポンスよく、今日、依頼されたら3日後に3パターンぐらい完成して好きなものを選んでもらう感じにしたい」
先ほどの作品も生成AIで最短40分、長くても1日で完成してましたね。
「びっくりしちゃいますよね、僕らと発想がそもそも全然違う訳です。あの人達にとって、それでも時間がかかるという感覚なんです。本業でなく副業で、本業を上回る収入が得られたら面白いんじゃないかな。観客だけが作品を面白がっている。創る側のスタッフは疲弊しているじゃ意味がない。まず創り手がプロセスを楽しめないと、多少スケジュールは厳しいけど他の映画より楽しいなと感じられる現場。要は監督をやっていても楽しい。我々が楽しんでやっていることを観客も楽しんでくれる環境を創りたいんです」
それをAIと共に創り上げていく訳ですね。
「そうですね、どっぷりAIで創ったことがないので、初めて監督をやるのと同じで、しかも自分が中心ではなくクリエーターが中心になって、それをまとめて、方針と方向を決めていく。これ誰が創ったのって言われたら、創り手の名前を挙げて、俺はそれを手伝ったと言いたい」
将来的にAIに仕事を奪われる心配はありますか?
「アメリカでストがありましたね。特に脚本家が危機感を感じている。AIは脚本を書けるので、どちらを採用するかはプロデューサーが選ぶ。じゃあAIに人間を描けるのかといえば、おそらく描けるわけです。人間の書いた映画や脚本を学習しているわけですから。この展開で、このセリフがあるとなぜ泣くかを理解している。その理解度がどんどん高まる。いろいろなパターンを生み出せる。つまり脚本に正解はないという所までいくと思います。著作権や肖像権についてもあまり人間が騒いでいると、これなら問題ありませんという提案をAIが学習して出してくるんじゃないかな」
この後、疲れを知らぬ三池監督は次のステージに向かい早足で移動していった
写真・文/ゴン川野
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