寝具向けのウレタンが原材料高の影響を受ける
資源高もマイナス要因になっています。
アキレスが2024年3月期に計上した減損損失の内訳を見ると、ウレタンが34億3,000万円、車輛資材が7億6,900万円、断熱資材が7億7,300万円となっており、ウレタンの比率が高くなっています。
この事業への投資額(成長期待)と実績(不調具合)に乖離があった様子が伺えます。
アキレスのウレタンは1962年にイギリスのICI社から技術協力を受けて製造を開始したもの。ヨーロッパで人気を集めていた新素材、軟質ポリウレタンフォームを日本国内で販売しました。このころ、ブリヂストンや東洋ゴム、横浜ゴム、松下電工などの会社がデュポン、バイエル、ICIから技術導入を受けてウレタンの国産化に向けて動き始めていました。アキレスは黎明期を支えた一社です。
ウレタンは自動車や建物の断熱材、輸送用資材などとして使われるほか、マットレスやソファなどの家具にも活用されています。苦戦しているのが寝具。アキレスは原材料価格、エネルギーコストの高止まりを踏まえ、寝具市場での競争激化も加えて収益性を見直した結果、短期的な回復は難しいとの結論に達しました。
常識破りの製品開発が必要に
アキレスは開発力のある会社で、環境に配慮したウレタン「フィッティ―」や、建築物省エネ法等改正案で新設された断熱性能等級の最高等級7に対応した「キューワンボードMA」などの新製品をいち早く市場投入しています。
高次元の反発弾性を備えた「アクロフォーム」を子供用運動あそびマットに展開し、キッズデザイン賞も受賞しました。
しかし、開発力が市場の低迷を突き抜けるほどのシェア獲得へと至っていません。
アキレスの看板ブランドである「瞬足」は、低迷する子供向けシューズ市場で、累計8,000万足を販売した異例のヒット商品。小学校のトラックでの走りやすさを追求し、左右非対称ソールという常識破り設計で子供たちの支持を得ました。
競合の登場や深刻な少子化によって、アキレスのシューズ事業をこれ以上拡大するのは難しいかもしれませんが、地力のあるアキレスならBtoB領域におけるイノベーションも起こしてくれるかもしれません。
取材・文/不破聡