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「給与所得控除」とは?計算方法をわかりやすく解説

2024.05.20

給与所得控除とは、会社員や公務員などの給料に対して適用される所得控除だ。所得控除を受けることで、課税所得が減少し、所得税や住民税を軽減できる。給与所得控除は、正社員だけでなくパートやアルバイトの方でも受けられる。源泉徴収票に「給与所得控除後の金額」という記載があるが、具体的にどのような意味合いがあるのか知らない方も多いだろう。

この記事では、給与所得控除の意味や仕組み、知っておくべきポイントなどを解説する。税額の計算だけでなく、年収の壁にも深く関連している概念なので、きちんと理解しておこう。

給与所得控除とは

給与所得控除とは、所得控除の一種だ。所得税は「収入-所得控除」で計算した課税所得をベースにして税額を決定するため、給与所得控除は所得税と深い関連があるといえる。

給与所得控除は、給与に対して適用される。具体的には、勤務先と雇用関係にあり給与や賞与を受け取っている人に対して、 給与所得控除が適用される。雇用関係にない業務委託やフリーランスなどの自営業者には、給与所得控除は適用されない。自営業者は、各々が必要経費を計上して確定申告を行うことになる。

給与所得控除は、簡単に言うと会社員や公務員のみなし経費だ。個人事業主であれば、業務に必要な経費をその都度計上できるが、会社員や公務員は経費をみなしで計上する。会社員や公務員が、いちいち業務に必要な支出の領収書を集めて、年間の経費を算出するのは膨大な手間がかかる。そのため、「年収がこのくらいなら、だいたい経費としてこのくらい支出しているだろう」と当てはまるのが、給与所得控除だ。

※出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」

※出典:国税庁「No.1400 給与所得」

給与所得控除の計算方法とシミュレーション

なお、給与所得控除は給与収入に応じて、以下の表に当てはめて計算する。

給与収入金額

(給与所得の源泉徴収票の支払金額) 給与所得控除額

1,625,000円まで

550,000円

1,625,001円から1,800,000円まで

収入金額×40%-100,000円

1,800,001円から3,600,000円まで

収入金額×30%+80,000円

3,600,001円から6,600,000円まで

収入金額×20%+440,000円

6,600,001円から8,500,000円まで

収入金額×10%+1,100,000円

8,500,001円以上

1,950,000円(上限)

給与所得控除の金額は最低でも55万円、年収850万を超えると一律で195万円だ。

例えば、年収が300万円の方であれば、受けられる給与所得控除は98万円となる。給与所得控除後の所得は202万円となり、さらに基礎控除や扶養控除などの所得控除を適用し、課税所得を算出する。

給与所得控除の計算のポイント

給与所得控除は、会社員や公務員が「業務に必要であろう経費」を、みなしで算出した金額だ。自分で負担した金額として、給与所得控除の金額は合致しているか考えてみよう。例えば、年収100万円程度のパートやアルバイトの方が、仕事に必要な経費として55万円も自腹で負担するだろうか。また、年収200万円程度の人が、68万円も自腹で負担するだろうか。

多くの場合、そこまで経費を支出していないだろう。実際のところ、給与所得控除の金額は、会社員や公務員にとって優遇されていると言える。2020年の改正で、給与所得控除の最低額が65万円から55万円に10万円引き下げられた(基礎控除は10万円引き上げられたため、税負担は実質変わらない)。

引き下げられたあとでも、実際に自腹で支出している以上の給与所得控除を受けられている人が多いだろう。

特定支出控除とは

会社員や公務員が経費を計上できる仕組みとして、特定支出控除がある。特定支出控除は、年間の特定支出(経費)が「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を超えたとき、確定申告により超える部分の金額を所得控除できる仕組みだ。

特定支出控除額の適用判定の基準となる金額は、給与所得控除金額の1/2だ。例えば、年収が300万円の方が受けられる給与所得控除は98万円だ。この場合、49万円を超えて業務に必要な経費を自己負担すると、特定支出控除を受けられる。なお、特定支出として認められるのは以下のとおりだ。

  • 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
  • 勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出(職務上の旅費)
  • 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
  • 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
  • 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
  • 単身赴任などの場合で、その者の勤務地または居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
  • 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
  • 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
  • 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)

スキルアップのためにセミナーを受けたときの研修費、資格取得に関する費用が含まれる。スーツ代も被服費として計上できるため、幅広い支出が特定支出に該当することがわかる。ただし、上記の支出に該当しても、勤務先から補てんがされており補てん分に所得税が課税されていない場合は特定支出として認められない。

例えば、多くの会社員や公務員は勤務先から通勤手当が支給されているだろう。公共交通機関を利用する場合の通勤手当は「1カ月あたり15万円までが非課税」なので、特定支出に計上できる金額の通勤費を自己負担しているケースは稀だろう。また、特定支出控除を受けるには、特定支出をした事実を勤務先に証明してもらう必要がある。そのうえで確定申告を行わなくてはならないため、かなり手間がかかる点は押さえておこう。

※出典:国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除」

給与所得控除はパート労働者の年収の壁に影響する

パート労働者の多くが意識している「103万円の壁」は、給与所得控除が深く関係している。年収が103万を超えると、本人に所得税の負担が発生する。逆に言えば、年収103万円以下であれば本人に所得税は発生しない。

パート労働者に適用される所得控除は、基本的に給与所得控除と基礎控除だ。55万円の給与所得控除と48万円の基礎控除を足すと、103万円になる。つまり、給与所得控除と基礎控除の合算である103万円以内に年収を納めれば、本人は所得税を負担せずに済む。

給与所得控除は、税金面での年収の壁に関連していることから、特にパートの方はきちんと理解しておく必要があるだろう。

※出典:国税庁「No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか」

まとめ

給与所得控除は、会社員や公務員の税額を決めるための重要な要素だ。正社員でもパートでも、雇用関係にある方であれば全員が関係する。

給与所得控除の意味合いは、業務に必要な経費を「おおよそこれくらい支出しているだろう」と、おおまかに算出することだ。実態として、給与所得控除ほどの支出をしていない人が多いと考えられることから、会社員や公務員にとって有利な制度と言える。

また、パート労働者で「103万円の壁」を意識している方にとっても、給与所得控除は重要な概念だ。税金の負担を軽減するためにも、きちんと理解しておきたい。

文/柴田充輝
厚生労働省、保険業界、不動産業界での勤務を経て独立。FP1級、社会保険労務士、行政書士、宅建士などの資格を保有しており、特に家計の見直しや資産運用のアドバイスのほか、金融メディアで1000記事以上の執筆を手掛けている。

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