国内の販売基盤を整えたら海外進出を本格化?
ダイドーは缶コーヒーに強みを持っています。缶タイプのコーヒー飲料の絶頂期は2000年代前半。このころは200万キロリットル程度を生産していました。現在は100万キロリットル程度にまで縮小しています。
缶コーヒーに代わって隆盛を極めているのがペットボトルタイプ。ペットボトルは市場の8割近くを占めています。今や缶コーヒーは1割程度しかありません。
ダイドーは「鬼滅の刃」のブームに乗って販売した「鬼滅缶」がヒットしました。発売から3週間ほどで5,000万本を超えています。
しかし、コラボレーションなどによる企画モノは一過性のものであり、本質的な業績改善を行うことができません。
その点、ダイナミックベンディングネットワークの設立で販売本数拡大に動いたことは、転換点を迎えたと見ることができます。最近では異常なほどの暑さが続く日も多く、自動販売機という販売チャネルは人々の生活を支えるインフラとなる可能性もあります。今後の成長には大いに期待できるでしょう。
ダイドーは海外展開も強化しています。2024年2月にポーランドで清涼飲料の製造販売を行うヴォサナを買収したのです。過去3期の売上推移を見ると堅調に成長しています。
2015年にはトルコで飲料製造などを行う会社を買収していました。リラ安などの逆境下にも関わらず、積極的なコスト削減を進めて過去最高益を達成しています。
海外においても戦略的な価格改定を行っており、2024年1月期の売上高は前期の4割増となる264億円で着地。11億円の赤字から、11億円の黒字へと大転換しました。
少子高齢化によって、長期的には国内の清涼飲料マーケットは縮小する可能性があります。国内のビールメーカーが海外に活路を見出しているように、清涼飲料水もやがて国外が主戦場になるかもしれません。
国内の販売基盤の整備と海外への進出。収益性を高めたダイドーが、次なるステージに向かおうとしています。
取材・文/不破聡