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所得税の項目に『復興特別所得税』が追加されていることに、気づいている人は多いでしょう。一体、何のための税金なのかを解説します。復興特別所得税を含む『復興特別税』の成り立ちや、誰がいくら払うものなのかを知っておきましょう。
復興特別所得税とは?
『復興特別所得税』は、震災復興のために設けられた『復興特別税』の一つです。復興特別所得税以外の特別税の概要も含め、具体的な成り立ちを解説します。
震災後に作られた「復興特別税」の一つ
『復興特別税』は、2011年3月11日に発生した『東日本大震災』の復興財源を確保するために生まれた税です。東日本大震災は東北を中心に大きな爪痕を残した震災で、復興には多くの費用がかかると見積もられました。
それぞれの地域が持つ予算では復興財源の確保が難しく、復興特別税を国全体が負担することで賄おうという方向に決まったのです。『特別税』は個人だけでなく、法人も負担することになります。
特別税の対象は、所得税・住民税・法人税の三つでした。『復興特別所得税』は、復興特別税の中でも『所得税』にかかる税金です。一時的な措置ではありますが、2013〜2037年と25年間にわたって徴収されることが決定しています。
「復興特別法人税」は2014年に廃止
復興特別税の中でも、日本で企業を営む法人に課せられていたのが『復興特別法人税』です。復興特別所得税とは異なり、2014年で徴収は終了しています。
課税標準法人税額の10%が復興特別法人税として課税され、2012年4月から2014年9月までが課税期間です。本来、2015年までの徴収を予定していましたが、1年前倒しで徴収が終了しています。
同時期に法人税引き下げの議論があり、復興特別法人税の徴収も前倒しで終わらせることが検討されたためです。2014年の税制改正により、正式に廃止が確定しました。
復興特別所得税は誰がいくら払う?
復興特別所得税は、個人に支払い義務がある税金です。具体的には、どんなときに支払う税金なのでしょうか?納税義務が発生するケースを解説します。どのように納付しているのかについても、併せて知っておきましょう。
所得税の納税義務がある個人
復興特別所得税は、個人が所得税とともに支払う税金です。対象者は、所得税の納税義務がある国民すべてとなっています。
所得税を納めている人ならば、自営か勤め人かの区別や業務の種類を問わず、復興特別所得税の納税義務があります。アルバイト・パートを含め、雇用形態も問いません。
給与所得の場合は天引きとなり、所得税に上乗せされる仕組みです。個人事業主でも同様に復興特別所得税が別途計算され、納税することになります。
一定以上の収入があって所得税を納めている人は、原則として全員が支払っている税金なのです。
所得に応じた額を納付
復興特別所得税は、年間所得の金額によって変動します。復興特別所得税が課される所得は、『給与所得』『年金』『退職金』『雑所得』『個人が営む事業所得』などです。
基本的に、個人が支払う所得税には復興特別所得税が加算されます。所得税が発生している場合は、復興特別税も納税していると考えておきましょう。
全員が一定額を支払うものではなく、所得税の金額が上がるほど復興特別所得税の負担も増します。
個人住民税の均等割部分へ加算も
個人が納税する住民税には、『復興特別住民税』も加算されています。期間は2014年から2023年までです。所得税とは異なり、全員一律の加算となっています。
住民税は所得によって変動する『所得割』と、所得に関係なく一律の金額が定められている『均等割』に分かれています。
復興特別住民税が加算されるのは、『均等割』の部分です。市町村民税と道府県民税の2種類に均等割があり、それぞれに500円ずつ復興特別税として加算されています。
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復興特別所得税の計算方法
復興特別所得税は、簡単な計算で導き出せます。所得税の計算方法とともに、復興特別所得税の計算方法を見ていきましょう。所得税率の仕組みや、具体的な計算例も紹介します。
基本となる「税率」
特別復興所得税は、基準所得税の金額をもとに算出する仕組みです。所得税は所得金額により5〜45%に分類されています。日本国内に居住している場合、『すべての所得金額』から『控除額』を差し引き、該当する所得税率をかけたものが所得税の金額です。
給与所得の場合、103万円を超えると所得税がかかります。所得が2400万円までであれば給与所得控除55万円、基礎控除48万円が差し引かれるため、年間所得が二つを合わせた『103万』円未満の場合は所得税が発生しません。
復興特別所得税は、所得税額に税率『2.1%』をかけて計算されます。所得税額、つまり所得が多いほど徴収される復興所得税額も多くなる仕組みです。
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実際に計算してみよう
復興特別所得税は、実際にどう求めるのでしょうか?所得税に2.1%をかけるだけなので、所得税額が導き出せれば簡単に計算できます。
所得税は、所得によって7段階に分かれています。例えば、課税される所得金額が195万〜329万9000円の場合、所得税率は10%で控除額が9万7000円です。実際の税額は他の控除を差し引いた課税額に10%をかけ、控除の9万7000円を引くと導き出せます。
計算した所得税が15万円の場合、徴収される復興特別所得税の額は『15万円×2.1%=3150円』です。
所得税率は年間の合計所得が1000〜194万9000円までなら5%、330万〜 694万9000円までなら20%と人によって変わります。年間所得ごとの税率は、国税庁のホームページで確認しましょう。
復興特別所得税の申告・納付方法
復興特別所得税は、いつ申告や納付を行うのでしょうか?個人事業主が確定申告をする場合を例に取って解説します。手順だけでなく、納付期限も忘れないよう気を付けましょう。
翌年に確定申告
個人事業主の場合、復興特別所得税は確定申告のときに納税します。毎年1月1日から12月31日までの所得を計算し、翌年2〜3月に確定申告を行う仕組みです。
個人事業主であっても源泉徴収されている収入があるときは、復興特別所得税も含まれた金額がすでに差し引かれています。徴収されている金額が年間所得に見合わないときは、確定申告で還付を受けましょう。
オンラインで確定申告書類を作成する場合、自動的に所得税と復興特別所得税が計算されます。手書きで記入するときは、復興特別所得税の記載忘れに注意しましょう。
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選べる納付方法
確定申告による納税は、いくつかの方法から選択できます。『金融機関からの振替』『クレジットカード』『電子納税』『QRコードによるコンビニ納付』『窓口納税』の5種類です。
金融機関からの振替は、3月15日までに『預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書』を提出することで対応してもらえます。4月の指定日に自動振替となるため、納税の手間がかかりません。
電子納税とクレジットカード払いは、インターネットから手続きできます。オンラインでの確定申告時にQRコードを発行すれば、コンビニで支払いが可能です。コンビニ納付は30万円以下の納税に限り対応しています。
税務署の窓口では、申告期限の3月15日まで納税を受け付けています。
忘れてはいけない納付期限
復興特別所得税を含む所得税は、確定申告の申告期限までに納税します。期限は祝祭日の状況によって変わりますが、確定申告の期間は原則2月16日から3月15日です。
ただし、金融機関の自動振替を申請すると引き落としは4月になります。納付期限までに支払いができない場合、延滞税や加算税の対象になってしまうことに注意が必要です。申告期限が過ぎるだけで、支払う税金が多くなってしまいます。
延滞税は申告期限を過ぎた時点で発生するものです。加算税は『税金の支払いを逃れようとしている』と判断されたときに加算されます。自動振替ができなかった場合も延滞税の対象となるため、口座振替を選択するときは残高不足に気を付けましょう。
事業を営んでいる場合、『青色申告』を選んでも期限までに申告・納付できなければ控除が減ってしまいます。申告や納付の期限は、忘れないようスケジュールに入れておくと安心です。
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構成/編集部