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人工衛星データの活用により期待が集まる業務の効率化、課題はディープフェイク対策

2024.03.26

衛星データのAI解析による業務効率化

地盤の変位解析イメージ(株式会社スペースシフト提供)

衛星データをAIによって自動で解析するソフトウェアを開発する株式会社スペースシフトは、衛星データの利活用で持続可能な社会の実現に貢献することを目指す宇宙ベンチャーだ。

日本企業が衛星データを活用して業務効率化を実現しているケースとして、最近はどんなものがトレンドなのか。同社の事業開発部 堤大陸氏は次のように述べる。

「現在、当社に多くお問い合わせいただいているのは、衛星データを用いたインフラ管理や災害対応などです。当社の場合、衛星の中でもとりわけSAR衛星と呼ばれるレーダー衛星のデータ解析を得意としており、災害対応における業務の効率化について非常に注目しています。

日本で頻発する水害の場合、光学衛星では発災直後などは天候の影響で撮像ができませんが、SAR衛星はその特性上天候問わず観測可能です。このことから、発災後、速やかに被害状況を把握することで、自治体様などの災害復旧の効率化が見込めるだけでなく、損保会社様など災害後の業務を請け負う企業様の業務効率化が見込めます」

●業務効率化の事例5分野

同社が開発・展開を進めている衛星データ活用によって業務効率化を実現する取り組みを5分野で挙げてもらった。

1.インフラ

衛星データを用いて地盤の変位量をミリ単位で解析し、インフラ管理の効率化などを行う。

2.災害

水害における解析イメージ(株式会社スペースシフト提供)

大規模洪水の発災時に、SAR衛星データを活用して浸水域をAIで自動的に解析し、そこにサプライチェーンに関わる道路情報や工場、住宅、商業施設の情報を重ねることで、被害状況をリアルタイムに可視化する。

3.農業

農作物生育状況把握。他の産地の状況把握による出荷時期の調整や、調味料などの関連商品のマーケティングへの活用を行う。

4.建物

SAR衛星データから新規に建築された建物や、解体された建物を検知する技術。地図更新業務の効率化はもちろんのこと、都市の開発動向の把握・土地価格の予測を行うことで、投資などへの活用を行う。

5.海洋

港湾管理・不審船監視など。不審船の監視などの安全保障の他、近年話題になった港湾におけるコンテナ量の変化の検知技術を開発している。

●ディープフェイクの課題への解決策

ディープフェイクの衛星データについてはどのようにとらえているか。

「数年前より研究成果が米国の研究機関などから報告されていますが、幸い、当社ではまだそのような問題に直面しておらず、現状具体的な対応は行っておりません。一方、当社の開発する基幹技術には『SARデータの信号情報からの物体検知』というものがあります。一般的なSAR衛星データ解析では、衛星が撮像したデータを画像化して解析を行っておりますが、当該技術は画像化のプロセスを経ずにデータを解析する技術のため、ディープフェイク技術への一つの対応策となる可能性があると考えています」

今後、衛星データ活用による業務効率化はより幅広い分野で進んでいくだろう。課題を解決しながら、さらなる活用を期待したい。

取材・文/石原亜香利

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