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人工衛星データの活用により期待が集まる業務の効率化、課題はディープフェイク対策

2024.03.26

日本で宇宙産業の急速な発展と新市場の創出の動きが進む中、人工衛星データ(以下、衛星データ)の活用が進んでいる。さまざまな活用方法があるが、今回は、業務効率化の分野における衛星データ活用について2社の事例を取り上げる。昨今、問題視されているディープフェイク問題などの課題解決策についても探った。

衛星データの監査・保証業務の事例

EY 新日本有限責任監査法人は、これまで民間ロケットの発射場となり得るスペースポート(宇宙港)に関する財務アドバイザリー業務や、宇宙スタートアップ企業のIPO支援などの宇宙関連サービスを提供してきた。

そして昨年12月には、宇宙ビジネス拡大を目的とした「宇宙ビジネス支援オフィス」を新設し、宇宙ビジネスの官民連携・官民共創アドバイザリーを強化し、宇宙ビジネスへの新規参入や宇宙スタートアップのIPOを重点的に支援することを発表した。

今後、宇宙・衛星データの監査・保証における活用、データの信頼性確保に取り組むという。

●衛星データの監査・保証業務の具体例

(画像はイメージ)

衛星データの監査・保証業務とは、具体的に何を指すのか。同社の担当者は次のように話す。

「例えば衛星データにより、遠隔地の物件や大規模な設備、また立入が困難な建設現場や採掘場等であってもオフィスからその概況を俯瞰的に確認することできるため、会計監査の一環として行われるビジネス環境の理解や現地視察の補助または代替として活用できる可能性があります。

対象エリアのデータが高頻度に収集されている場合は、ほぼリアルタイムで現状把握することも可能となります」

その他、温室効果ガスの排出量の算出にも活用できるという。

「世界的にサステナビリティ情報の開示について合理的保証を求める方向に動いている中、衛星データは地球環境の変化を大規模に捉えることができることから、企業の活動を評価する際の客観的情報として活用する可能性について注目が高まっています。

例えば、オーストラリアのNGO法人Climate TRACEは、衛星データと地球上の観測データを合成し、AIを活用して世界各国の温室効果ガスの排出量について独立した推計値を算出し情報提供しています」

●ディープフェイクの課題への解決策

衛星データを業務で活用する際に、ディープフェイクの衛星データがはびこる問題には注意しなければならない。

ディープフェイクとは「ディープラーニング」と「フェイク」を組み合わせた造語。つまりAIのディープラーニング技術を用いて、特定の人物の動画や音声を人工的に合成する処理技術を言う。ディープフェイクで作られた偽の衛星写真が国内外で問題視されている。

担当者に解決策を聞いた。

「ディープフェイクの技術により不正に改ざんされた衛星データの流通を防御するには、データソースとデータ提供事業者の信頼性が重要な要素となります。

衛星データの民間利用が進みつつある中、データ提供事業者も増加しています。データ提供事業者(二次業者)は、確かな衛星事業者(一次業者)からデータを入手していることを利用者に表明するためにも、自社のデータ管理体制を堅牢なものにすることが、提供するデータの信頼性を担保することにつながります」

「またAI機械学習を活用して衛星データを解析する事業者も増加していますが、衛星データの管理体制やAIアプリケーションの信頼性を高めるために、データの利用やAIの活用に関する内部統制を第三者に評価してもらうことも有効な手段と言えます」

監査法人では、データ提供事業者やAIサービス提供業者の内部統制の状況を把握し、その有効性の評価に資する保証報告書などを発行することができるため、管理態勢の透明性強化に貢献できるという。

●その他の課題

その他の衛星データの監査・保証業務においてはどのような課題があるか。

「衛星データの民間利用が進みつつある状況ですが、市場は黎明期の段階であるといえます。そのため高頻度かつ高解像度のデータを捕捉できるエリアはまだ限定的であることが課題の一つです。

またデータの購入価格も民間企業が日常的に利用できる手頃な水準には至っていないことも課題と考えられます。世界の衛星打上げ実績は年間平均約92機ですが、日本の打上げ実績は世界のわずか6%程度です」

果たして、解決策は?

「民間利用も踏まえた人工衛星が今後、日本でも増加することが見込まれているため、こうした課題は時間の経過とともに解決されると思われますが、しばらくは重要性の高い領域、有効なデータが入手できる領域など、条件が整っていることを見極めることが必要となります。

これには入手可能な衛星データの種類・特性を熟知した専門家の支援が得られるか否かが、プロジェクト成否を分けるポイントになると思われます」

衛星データを活用する監査・保証業務は従来の業務を効率化する。今後はさまざまな活用アイデアが生まれ、さらに活用が進んでいきそうだ。課題解決の鍵となるのは「信頼性」といえるのかもしれない。

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