今回は、最新刊『最速で結果を出す超タイパ仕事術』の重要なコンセプトである「引き算する覚悟」に焦点を当てます。
タイパ(Time Performance)とは、時間を効果的に使い、パフォーマンスを高める術を指します。効率だけでなく、実際の成果に重点を置くことが、タイパ仕事術の本質です。時間を削減し、それによってパフォーマンスを向上させることを強く意識しましょう。
時間の削減とパフォーマンスの向上を実践するうえで不可欠なのは「引き算する覚悟」です。例として、食洗機やロボット掃除機を家庭内で導入するケースを考えてみましょう。これらの家電製品は、手作業での時間を削減し、ほかの重要なことに時間を割く余裕を生み出します。しかし、これらを導入するには、まず台所の配置を見直したり古い掃除機を手放したりしなければなりません。このことによって、スペースや時間の効率化が達成されるのです。
古くて不要なものを手放す〝引き算〟で新しいものを導入する効果を最大化しよう
「引き算する覚悟」は、ビジネスの世界におけるITツールや制度の導入にも適用されます。例えば、最新のクラウドサービスや自動化ツールを導入する際には「引き算する覚悟」が求められます。古いバージョンのソフトウェアや時代遅れの手法を手放すことで、新しいシステムの効果を最大化できるはずです。
また、ビジネスミーティングやプレゼンテーションの質を高めるうえでも〝引き算〟は有効です。例えば、会議のアジェンダから不要な項目を削除して重要な議論に集中すれば、会議の効率を高めることができます。プレゼンテーションでは、必要最低限のスライドに絞り込むことで、メッセージをより明確に伝えられるのです。
〝100%完璧〟を追求することは非効率!〝70%の完成度〟で仕事はうまくいく
「引き算する覚悟」を持ち、完璧主義の罠に陥らないことも重要です。私たちはしばしば、完璧な結果を求めすぎるあまり、時間とエネルギーを過度に消耗してしまいがちです。しかし、100%の完璧さを追求することは時として非効率であり、重要な目的を見失う原因となり得ます。
実際に多くの場合、まずは完成度が70%の段階であっても書類を早めに提出し、それに対するフィードバックをもとに改善して仕上げるほうが、差し戻しが減ります。完璧を求めすぎるあまりに生じてしまう無駄な時間を節約し、結果としてタイパを高めることを目指しましょう。
70%の段階で書類を提出することは、作業の進行を結果的に早めるだけでなく、他者の意見や視点を取り入れる〝余白〟も生まれます。これにより、独りよがりに陥ることなく、様々な人の意見を盛り込んだ包括的かつ多角的な視点を、書類に反映できるのです。
このアプローチは、ひとつの仕事に関する質を向上させるだけでありません。複数のプロジェクトやタスクが同時に進めやすくなるでしょう。
完璧主義からの脱却は、ストレス管理にも寄与します。仕事において、時には妥協が必要です。すべてを完璧にしようとすれば、過度なストレスや燃え尽き症候群を招く可能性があります。「引き算する覚悟」によって現実的な目標を設定し、進捗に基づいて柔軟に調整することが、健康的で持続可能な働き方につながります。
常にフルパワーで働くのではなく、エネルギーを適切に管理し、必要な時に全力を尽くすことが大切です。アクセルとブレーキを適切に使い分けることによって、長期的に高いパフォーマンスを維持することが可能になります。
時間やエネルギーを重要なことに集中させればパフォーマンスは確実に高められる
メールのやりとりでも〝引き算〟の考え方は重要です。優先すべき本当に必要なコミュニケーションに集中すれば、より生産的な時間を確保できます。すべてのメールに対して即時に対応するのではなく、その時々に応じて重要なものだけを優先しましょう。
仕事のプロセスにおいても「引き算する覚悟」をもとに無駄を省き、効率化を図ることが重要です。例えば、定例会議や報告書の形式など、古くからの慣習に縛られている場合、それらを見直し、必要なものだけに絞ることで、時間とエネルギーを節約できます。
さらに、個人のスキルセットに対しても〝引き算〟のアプローチを適用する視点を持ちましょう。すべてを自分でこなすのではなく、得意な分野に集中し、ほかの分野はチームメイトや外部の専門家に委ねれば、より効果的な成果を生まれるはずです。自分の限界を受け入れ、チームワークの重要性を認めることにもつながります。
『最速で結果を出す超タイパ仕事術』で解説している「引き算する覚悟」は、仕事量を単に減らすのではなく、重要なことに時間とエネルギーを集中させるための戦略です。この原則を理解して行動に移せば、仕事の効率と効果を大幅に向上させられます。〝引き算〟により、仕事でも家庭でもより多くのことを得られるでしょう。ぜひ実践してみてください。
文/越川 慎司
全員が専業禁止、週休3日の株式会社クロスリバーの代表取締役社長。800社超の働き方改革を支援している。仕事のタイパを上げるオンライン講座の実施は年間400件以上。自著29冊、最新刊『最速で結果を出す超タイパ仕事術』(小学館)が好評発売中。
800社17万3000人のAI行動分析でわかった最速で結果を出す「超タイパ仕事術」が書籍化!
越川さんは、複業・週休3日を実践しながら800社へ働き方改革のノウハウを提供し、24冊以上のビジネス書を執筆している、まさに仕事効率化のスペシャリスト。その越川氏の著書が発売中だ。
最速で結果を出す超タイパ仕事術
著:越川慎司
同氏がこれまでに働き方改革を支援してきたのは800社以上にのぼる。クライアント企業の優秀なビジネスパーソンに見られる行動を分析して導き出した、業務の無駄を徹底的に省き、仕事のタイパ(タイムパフォーマンス)を高める方法を詳しく解説しています。その一部をダイジェストで紹介します。
同書は、第1章から第5章までの5部構成になっています。
第1章では、企業にはびこる無駄の数々について実証データをもとに紹介。「よかれと思って作ったページの81%が読まれない」「重要だと思っていた書類の88%は不要だった」など、どれも衝撃的な内容となっています。日頃の仕事でいかに時間を浪費しているのかを
思い知らされるはずです。
第2章では、人間の思考傾向や行動原理について解説。「目の前の仕事に集中したくなる」「完璧を求めすぎると疲弊するだけ」といった思考回路を意識することにより、無駄を生じている様々な思い込みをやめるきっかけになるでしょう。
第3章では、仕事の取捨選択を行なう際の〝見極め〟を伝授。「自分の目標から逆算して、本当に必要な業務に注力する」「場合によっては念のための確認を省く」といった考え方を知ることで、在的には無駄だとわかってはいるもののやめられない業務を手放せるようになるはです。
第4章は、本書のメインテーマである〝タイパ〟を高めるための「無駄をやめられる35の秘策」を大公開。コミュニケーション、情報収集、アウトプット、タイムマネジメント、プレゼン、キャリアの形成といった6つのテーマごとに、具体的にどんなアクションを起こすことで無駄を省けるのかを、わかりやすく紹介しています。35の秘策をすべて実践する必要はなく、真似できそうなところから始めてみても問題ないはずです。
第5章は、成果を出し続けている企業の事例を挙げながら、組織としてタイパを高める習慣を指南。第4章までの内容と合わせて実践し、理想的な職場環境を構築を目指しましょう。
なお、同書で紹介している〝超タイパ仕事術〟によって成果を上げているビジネスパーソンの実例も、コラムページで詳しく解説していますので、多くのビジネスパーソンにとって働き方を見直す指針となるはずです。