目次
MECEとは?意味と必要性を解説
ビジネスパーソンなら、『MECE』という言葉を一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか?MECEの意味とビジネスシーンで必要とされる理由を解説します。
■「漏れと重複がない」状態を指す
MECEは、『Mutually Exclusive』と『Collectively Exhaustive』の頭文字を取ったもので、読み方はミーシーまたはミッシーです。『Mutually Exclusive』は相互に排他的であること、『Collectively Exhaustive』は全体を網羅していることを意味します。
MECEは、論理的思考(ロジカルシンキング)の土台です。論理的思考とは、物事の因果関係を整理しながら、矛盾がないように思考する方法を指します。根拠を積み重ねて結論を導き出すために、MECEは欠かせません。
■MECEが必要とされる理由
ビジネスパーソンにMECEが必要とされるのはなぜでしょうか?ビジネスシーンでは、さまざまな問題が発生します。すぐに解決できる問題もあれば、物事が複雑に絡み合い、解決に時間や労力を要するものもあります。
複雑な問題を解決に導くには、与えられた情報を整理し、小さな要素に切り分けて考えることが重要です。ただし、切り分け時に漏れや重複があると、正確な答えを導き出せなかったり、解決に多くの時間を費やしてしまったりする恐れがあります。
ビジネスでは、新たな問題が次々と発生するため、一つの問題ばかりに時間を割けません。MECEを活用することで、物事の解決をより効率的に進められます。
MECEを具体例でより分かりやすく解説
MECEが示す『漏れなく・重複なく』とは、どのような状態を指すのでしょうか?MECEである状態と、MECEではない状態の具体例を取り上げます。
■MECEである状態
国内旅行の移動手段を例に考えてみましょう。
車や電車、飛行機などがありますが、手当たり次第に挙げていくと漏れが生じてしまいます。MECEである状態にするためには、まずざっくりと陸路・空路・海路などに大別することが必要です。その後に、車・電車・バス・バイク・自転車・飛行機・船など、具体的な移動手段を挙げると漏れを防げます。
また、市場調査で顧客分析を行なう際は、国籍や都道府県、血液型でターゲットを分類すれば、漏れや重複が生じません。年代別で調査する際は、10代未満・10代・20代・30代・40代・50代・60代・70代以上などに分類すると、全ての年代層を重複なく網羅できるでしょう。
■MECEではない状態
MECEではない状態とは、『漏れはあるが重複はない』『漏れはないが重複がある』『漏れも重複もある』の3パターンです。
国内旅行の移動手段を車・電車・バス・バイク・自転車・飛行機・船・公共交通機関に分類した場合、公共交通機関には電車やバスが含まれるため、重複が生じます。
顧客調査のターゲットを10代・20代・30代・40代・50代で分類した場合、重複はないものの、10代未満・60代以上の顧客のデータが漏れてしまいます。ターゲットを学生・会社員・無職に分類すれば、社会人学生は重複し、個人事業主や経営者、フリーターなどは漏れてしまうでしょう。
MECEを分析するための4つの切り口
MECEを分析する上では、最初に実施する『情報の切り分け』が重要な意味を持ちます。思いつくままに分類すれば、漏れや重複が生じてしまうでしょう。代表的な四つの切り口を解説します。
■因数分解を用いる
因数分解とは、『全体=A×B×C』のように、分析対象を計算式にする方法です。売上アップの分析をはじめ、ビジネスシーンでよく活用されます。
例えば、店舗の売上は『販売単価×売上数量』で表せます。売上を増やすなら、単純に販売単価を上げるだけでなく、売上数量を増やす工夫が求められるでしょう。
因数分解では、全体を四則演算により分解していくため、漏れがありません。同じ要素が二つなければ、重複も生じないのが特徴です。
■プロセスに沿って分ける
物事をプロセスに沿って分ける方法もあります。例えば、新たな商品の開発は、以下のような順番で進みます。
- 企画
- 市場調査
- 開発
- テストマーケティング
- プロモーション
- 市場導入
- モニタリング
消費者の購買プロセスを示した『AIDMA』や、業務改善のフレームワーク『PDCAサイクル』、企業の事業活動を価値の連鎖として表した『バリューチェーン』は、構成要素を時系列やプロセスで分ける代表的なフレームワークです。
■対照概念を使う
対照概念とは、相反する二つの概念を指します。具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- メリットとデメリット
- 強みと弱み
- 固定と変動
- 量と質
- 内部環境と外部環境
- 個人と法人
- 主観と客観
- 新規顧客と既存顧客
- 偶然と必然
対照概念に分けて考えることで、物事をより理解しやすくなる上、それぞれに適した戦略や解決方法を考えられます。相手に説明する際も、対照概念を例に出すと理解を得られやすくなるでしょう。
■要素ごとに分ける
大きな問題に対処する際は、一定のルールに基づいて、全体を要素ごとに分ける方法が有効です。分解した要素を合わせたものは、必ず全体となるので、漏れや重複がありません。
前述した因数分解は、『全体=A×B×C』の計算式で表されるため、『掛け算式』と呼ばれます。一方、要素ごとに分ける方法は、『全体=A+B+C』が成り立つため、『足し算式(積み上げ型)』と呼ばれます。
全体を要素に分解するメリットは、各要素に存在する問題に集中して対処できる点です。問題の大きさに圧倒されることなく、スモールステップで前に進めます。
MECEを用いる際に気を付けるポイント
MECEの意味や定義は理解しているものの、実際にビジネスシーンでうまく活用できる人は多くありません。MECEを使いこなす上で、注意したいポイントを解説します。
■視点と切り口をそろえる
分析対象を分けるときは、視点をそろえる必要があります。異なる視点・階層のものを並べると、漏れや重複が生じかねません。
例えば、国内の移動手段において、陸路・空路・海路は横一列の関係ですが、公共交通機関は、階層が異なります。
MECEを分析するための切り口は複数あります。視点や階層をそろえるだけでなく、異なる切り口を混在させないように注意しなければなりません。切り口を間違えると、正しい分析ができなくなり、見当違いの結果が出てしまう可能性があります。
■MECEは手段であることを意識する
MECEはあくまでも情報を整理するための手段であり、目的ではないことを肝に銘じましょう。情報の分類自体が仕事になってしまい、問題解決や目標達成という真のゴールを見失ってしまう人は少なくありません。
対象を深く掘り下げすぎると、時間や労力が費やされるだけでなく、複雑で分かりにくくなる傾向があります。細部まで完璧に分類するのではなく、重要な事項を漏らさないことと、重複させないことに意識を向けましょう。
また、MECEという手法だけに依存せず、他のフレームワークや手法を適切に使い分ける必要があります。
MECEを理解して論理的思考を強化しよう
MECEとは、漏れや重複がない状態です。MECEによって問題や情報が整理されてこそ、より論理的に物事を考えられるようになるのです。ビジネスパーソンにとって、MECEと論理的思考はどちらも欠かせないものといえるでしょう。
MECEは、視点と切り口の定め方が重要です。視点がずれていたり、複数の切り口が混在していたりすると、正解ではない結論が導き出される可能性があります。MECEが正しく行なえているかどうかを第三者にチェックしてもらうのもよいでしょう。
構成/編集部