2023年は、人的資本経営元年と言われた2022年に立てた計画を推進された年となった。
2023年3月期決算からは上場企業などを対象として「人的資本の情報開示」が義務化され、女性管理職比率や男女の賃金格差などの記載が新たに求められていることから、ジェンダー格差の解消に取り組んでいる企業は少なくない。
「働きがい」は男女で差が生じやすい指標であることから、GPTW Japanでは2017年版から特に女性の働きがいに優れた企業を「女性ランキング」として選出している。
2024年版では、GPTW Japanの「働きがいのある会社」調査に参加した653社にアンケート調査を行い、調査結果が一定水準を超えた「働きがい認定企業」の中から特に女性の働きがいに優れた企業を、各企業規模部門別に上位5社選出したので、詳細をお伝えしよう。
2024年版 日本における「働きがいのある会社」 女性ランキングと、各規模1位企業の評価ポイント
■ディスコ(大規模部門1位)
性別などによって評価の基準が変わることがないことを価値観として明確に定められており、あらゆる人が活躍できるよう組織づくりが行われている。そのような風土により女性従業員の高い働きがいを実現していた。
■フロンティアホールディングス(中規模部門1位)
社員同士が助け合う文化が浸透しており、様々なライフイベントに対しても、職場復帰がしやすいような体制が整えられている。社員の幸福度を高めるための様々な施策を通じ、ほとんどの従業員が仕事に対してポジティブな状態でいることができていた。
■イベント21(小規模部門1位)
立場に関わらず全員が活躍できる制度があり、土台となるカルチャーも醸成されている。個人の能力や成果に基づき公正に評価する手厚い仕組みがあるのも魅力。女性社員の採用増加に伴い女性の上級管理職への登用も増えている点も評価された。
2024年版 日本における「働きがいのある会社」女性ランキング 今年度の傾向
全調査参加企業(653 社)の男女別のスコアを算出したところ、調査設問60問において、女性の方が男性よりスコアが高い設問は11問のみ(18.3%)で、残りの49問(81.7%)は男性の方が女性よりスコアが高い結果に。
男性の方がスコアが高い設問の男女差は最大で8.1ptであるのに対し、女性の方がスコアが高い設問の男女差は2pt未満に留まっていた。このことから、一般的に男性の方が女性よりも働きがいを感じていることが示唆される。
男女差が特に大きい設問として、仕事・会社への「誇り」と「公正」に関するものが上位に並んだ。女性の方が仕事を認められたり、意味や意義を感じたりする機会が少なく、公正な扱いを受けていないと感じていることを示唆している。
この傾向は、前回発表時(2023年3月)とほぼ同様であり、男女における働きがいの感じ方に大きな変化はなかった。
■管理職層別の女性管理職比率
GPTWでは、調査参加企業の中から「働く人へのアンケート」の結果が一定水準を満たした企業を「働きがい認定企業」、さらにその上位100社を「ベスト100」として発表している。
今回は参加企業を「ベスト100」「認定企業(ベスト100除く)」「不認定企業」に分類して管理職層別の女性管理職比率を算出した。
※紹介するデータは、全調査参加企業のデータについては総計 653 社、「働きがい認定企業」のデータについては総計 264 社、ベスト100社のデータについては総計100社のデータをもとに出しており、個別の管理職層別の結果を示すデータは上記のうち回答があった企業や該当情報のある企業のみのデータを使用。
その結果、「管理職(部長層未満)」(以降、課長層)の女性比率はベスト100・認定企業においては3割に近づいていることが判明。
GPTWの調査に参加する企業の女性管理職比率は高く、不認定企業であっても世の中平均(※)を上回っていることから、働きがいを高める意欲のある企業の女性活躍推進は進んでいることが分かる 。
※全産業の事業所における課長相当職以上の管理職に占める女性割合 9.8 % 出典:帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査 2023年
■各管理職層の女性における働きがいの差
次に、「総合的にみて働きがいがあると言える」という設問に対する各管理職層の女性のスコアをベスト100、認定企業(ベスト100除く)、不認定企業別に比較したところ、特に不認定企業において階層間のギャップが大きく、課長層の女性のスコアが低かった。
部長層以上の働きがいは認定・不認定に関わらず一定高いため、課長層の女性管理職の働きがいに着目し、引き上げていくことが効果的だと考えられる。
■課長層の女性の働きがい比較
不認定企業における課長層の女性の働きがいを、認定企業の同じく課長層の女性の回答状況と比較したところ、特にギャップの大きかった5設問のうち、2設問は「公正」に関連したものであった。
男女差が大きかった「誰もが認められる機会がある」が不認定企業では低いが、認定企業の課長層の女性では高いことが判明。課長層の働きがいを高めることにおいて、認められる機会の創出は多くの企業で成長の機会(改善点)となると考えられる。
調査概要
調査期間:2022年7月~2023年9月(2024年版調査)
参加社数:653社
評価観点:働く人へのアンケートの結果が一定水準を超える「働きがい認定企業」を対象に、1)「女性の従業員アンケートの結果」、2)「女性従業員比率などの基本会社データ」の2つの観点から評価
関連情報
https://hatarakigai.info/ranking/woman/2024.html
構成/Ara