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ドコモの通信品質は本当に改善したのか?出遅れが目立つドコモと対するKDDI、ソフトバンクの5Gエリア戦略の違い

2024.03.15

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回はドコモのネットワーク品質について会議します。

ドコモの通信品質は依然として……

房野氏:ドコモのネットワーク品質についてですが、たとえばネットワークについての他社説明会のたびに、悪い意味で話題になってしまっています。

房野氏

石川氏:KDDIがネットワークに関する説明会をやっていたけど、ドコモの通信品質の下落がグラフに出てしまっていた。ドコモは通信品質の改善について、2023年12月までの目標は達成した、ネガティブな声は減ったといっているけど、ユーザーメリットまで至っていない気がします。

石川氏

石野氏:ドコモが目標を達成した、やり切ったと言っているのは、トラフィックがあふれている、もしくはあふれそうな基地局を2000局把握して、2023年中に90%のチューニングを完成させて、残り200局は年度末までにやるというものでした。

じゃあ、そもそも対策が必要な基地局は、本当に2000局で正しいのかということが問題。KDDI、ソフトバンクは、ユーザーの端末から情報を吸い上げて、どの場所で、どのくらいの体感品質になっているのかを、メッシュにしてピンポイントで特定できている。

一方ドコモは、この基地局がダメということしかわかっていない。基地局は電波をいろんな方向に吹いているので、具体的にどこが詰まっているのかを検知できていません。

石野氏

房野氏:基地局を特定するだけではダメなんですか?

石野氏:基地局がダメとわかっても、その基地局から出ている電波のうち、どのエリアがダメなのかがわからないんですよ。

石川氏:ドコモは、どこで詰まっているのかを測定しに行って、アンテナの角度調整をしています。

房野氏:KDDIやソフトバンクのように、ドコモが端末から情報を吸い上げられていないのには、何か理由があるのでしょうか。

法林氏:自社アプリにそういう機能を搭載していないから。

法林氏

石川氏:そもそもそういう発想がなかった。

法林氏:ソフトバンクでいえば、Agoop(位置情報を活用したビッグデータ事業を手掛けるソフトバンクの子会社)が作ったアプリに入っているし、防災アプリにも入っている。

石野氏:Yahoo!のアプリにも入っていますよね。

法林氏:そう。KDDIは、My auと、Wi-Fi接続ツールアプリに入っています。

石川氏:auは、フィーチャーフォンの時代からやっていましたからね。

法林氏:そうだね。アプリにこういう機能を入れると、どの位置でどれくらいつながらないのか、どれくらいの限界強度なのかというデータが取れるので、それを解析して、対策を練れる。d払いアプリが起動するまでの時間を計測して解析する程度とは、次元が違うよね。

石野氏:しかも、d払いアプリの計測だって始めたばかり。なので、2000局という数字はざっくりの数字であって、ドコモがわかっていないところが、下手したら数万から数十万か所ある可能性だってある 。そこが対策されていないうちに、「やり切った」とか、「通信品質が不満でドコモから移行した人は多分いない」とか言っちゃうから、炎上するんですよ。

法林氏:通信品質が原因でドコモから出ていった人はそんなにいないというのは、島田さんの言葉。

日本電信電話株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 島田 明氏

石川氏:僕の質問から引き出した解答です(笑)

石野氏:あれはいい質問でしたよ。

法林氏:このタイミングで、あんな発言をしてしまうのは、社長としてどうかと思う。

石川氏:本当は、ドコモの社長である井伊さんがいる会見で、内容をわかっている立場の人が返答をしないといけない。

株式会社NTTドコモ 代表取締役社長 井伊 基之氏

石野氏:しかも、会見場自体でパケ詰まりが起きていた……。

石川氏:そうそう。5GMARK(通信速度計測アプリ)でもスコアが3桁くらいしか出なかった。

石野氏:スピードテストをしても、エラーになってしまうレベルです。会見が終わったら、10Mbpsくらいになったんですけど、会場にいたの人数ってせいぜい数十人程度ですよ。

法林氏:タイミングの悪さはあった。説明会当日にd払いで障害も起こっていたしね。

房野氏:そうでしたね。

石野氏:ただ、数十人程度でそこまで詰まってしまうものかと。会見が終わって記者などが退席したら、多少通信ができるようになったんですけど、じゃあどれだけキャパがないのかとも思ってしまいます。もはや、予算を引き出すために、現場の人たちが社長が来るところでわざと詰まらせているんじゃないかとすら思う(笑)

法林氏:それは陰謀論が過ぎる(笑)

石川氏:ドコモとしては、3月でどうにかすると言っているけど、うーん。厳しそうですよね。

法林氏:無理だよね。この前の会見で、下り速度が1.7倍になったと発表していたけれど、SNSの反応を見ると、「100kbpsの1.7倍は170kbpsだろ」と突っ込まれていた。ユーザーもかなり辛辣な見方をしています。

石野氏:ドコモの発表方法もずるくて、「不満の声が80%減少」といっている。企業がパーセントで説明する場合は、逆に実数を見ないと実態が見えないことがある。例えば、先日開催されたコミケでのKDDIへの不満件数は、たった5件程度なんですよ。

石川氏:桁が間違っているのかと思ったよね(笑)

石野氏:そうですよね。ドコモが80%減ったといっても、以前はどれだけ多かったんだという話です。そもそも、通信回線の不満をSNSに投稿するケースって、かなりレアだと思います。

房野氏:ドコモが今後、通信品質を改善していくためには、どういう対応が必要なのでしょうか。

石野氏:まず、どこが詰まっているのかを特定するところからです。多分ですけど、場所によって原因が違って、トラフィックが足りないところもある一方で、下りはつながるけれど上りがつながらないところがある。

あるネットワーク関係者に聞いたんですが、スマートフォンが遠く離れた基地局と通信しようとする場合、出力が強い基地局からの下りはつながるけれど、端末からの上りは出力が弱いためつながりにくい。でも、しっかりとチューニングがされていれば、遠くの基地局からの通信を切り離し、なるべく近くの基地局につながるよう切り替えるはず。なのに、こんな基本的なことができていません。

法林氏:ハンドオーバーが上手くいかなかったころのPHSの通信みたい。

石野氏:本当ですよね。加えて、渋谷のように利用者が多い場所のエリア設計が崩れていることもある。5Gの基地局が足りないのかな。

石川氏:以前この会議で話しましたけれど、ドコモと違って、KDDIやソフトバンクはグローバルベンダーとも協力してネットワークを作っている。ドコモのネットワーク構築の前提が、行き詰っている感じもあるよね。

房野氏:決算資料を見ると、ドコモのARPU(アープ:Average Revenue Per Userの略でユーザー1人あたりの売上金額を示す)は下がっていましたね。

石野氏:下がったけれど、何が原因とは言い切れません。

石川氏:小容量の料金プラン「irumo(イルモ)」が始まった影響もあります。

石野氏:KDDIも、UQ mobileを始めた時には、ARPUが下がりましたからね。

石川氏:KDDIとソフトバンクは、早い段階でUQ mobile、ワイモバイルを始めた。そして、いったんARPUが落ちたけれど、今は回復している。irumoは2023年に始めたばかりなので、ARPUが落ちてくるタイミングです。

石野氏:なので、必ずしもネットワーク品質だけが原因で、ARPUが落ちているというわけではありません。

石川氏:ネットワーク品質が原因なんじゃないかと聞いたら、島田社長は「アンケートを取っていないからわからないけど、いないと思う」と。

石野氏:ネットワーク品質が原因でドコモから離脱したユーザーは、結構いると思うけどなぁ(笑)

法林氏:経営者としての回答とは言い難いよね。

石川氏:そこだけ切り取られて、SNSで配信されちゃいますよ。

房野氏:KDDIとソフトバンクのARPUは上がってきていますよね。

石野氏:そうですね。今まで下がっていたけど。

法林氏:2社は持ちあがってきている。

石川氏:ARPUが10円くらい下がっているところもあるけれど、ようやく苦しい時期は抜けたという感じ。

石野氏:メインブランドの契約者が増えています。ソフトバンクで言えば、「ペイトク」も伸びているし、通信品質の良さが効いて無制限に使いたいというニーズが出てきている。メインブランドとして評価されてきていますね。

法林氏:ドコモで最も多いと言われているライトなユーザーが、料金プランをirumoに移行しはじめてる。だからライトユーザーでもそこそこの料金を払ってくれていた旧プランから、基本料金が下がり、一気に支払い額が下がってしまった。まあ、メールがオプションだったり、家族間の国内通話無料サービスがないなど、irumoはサービスをいろいろ省略しているので、今後、そのあたり差に気づいたユーザーが料金プランをeximoに変更してくると思います。

房野氏:サービスも、ネットワークも不調となると、ドコモは八方ふさがりな状態ですね。

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