裁判所のジャッジ
Xさんの勝訴です。
裁判所
「Xさんはまだ社員としての地位を有している」
「バックペイ(給料)約180万円を払え」
「慰謝料20万円も払いなさい」
社長
「ちょっと待ってください!妊娠後、退職の合意をしました」
裁判所
「そんな合意はなかったと認定します。妊娠中に退職の合意があったかどうかはチョー慎重に判断すべきなのです(正確には「自由な意思に基づいて合意したと認められるに足りる合理的な理由が存在するかどうかを慎重に判断」)」
裁判所は以下の理由を挙げています。
・会社はXさんから社会保険についての連絡があった時に明確な説明をしていない
・退職手続きがとられていない(退職届の受理、退職証明書の発行、離職票の提供など)
・Xさんは「自主退職ではない」と抗議している
・会社に残るか、退職したうえで派遣登録するか、検討するための情報がなかった
▼ バックペイ(過去の給料)
退職が無効となると、Xさんはまだ社員ということが確定するので、過去の給料をガッツリいただけます。今回はザックリ180万円です(H27.12から給料をもらっていないので、H27.12〜H29.1。15万円×12か月=180万円)。これをバックペイといいます。
Q.
転職してしまった場合は、どうなるんでしょうか?
A.
転職したとしても6割の給料をもらえます。ただし「元職場に戻る意思がある」と認定できる期間分だけです。裁判官が「もう戻るつもりないよね」と認定した時点以降はもらえません。でも、かなりデカイですよね。会社からすれば衝撃です。
さらに裁判所は会社に対して慰謝料20万円の支払いも命じました。妊娠中の不利益取り扱いの禁止を定めた雇用機会均等法9条3項を考慮しての算定です。
ほかの裁判例
出産した女性が【パート】に変更させられた事件もあります。
その後、女性は解雇されてしまったのですが、裁判所は「パートへの変更は不利益取り扱いじゃん。解雇ダメ。バックペイ200万超えを払え」と命じました。
相談するところ
産休・育休・妊娠で会社から理不尽なことを言われている方は労働局雇用均等室に駆け込みましょう。労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
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