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出産後に時短勤務を拒否、第二子の産休・育休も認めなかった中小企業に「異次元の少子化対策」は届くのか

2023.03.28

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

裁判例をザックリ解説します。

出産を経て職場復帰した女性が・・・解雇された事件です。

▼ 第1子の出産後

■ Xさん
「夕方5時ころには帰れる時短勤務をしたいのですが」

■ 社長
「時短勤務をするなら【パート】になるしかないですね」

▼ 第2子の妊娠

Xさん
「産休、育休をとりたいのですが」

社長・課長
「認めません」

その後、出産、育休を経て職場復帰したのですが、4ヶ月後に解雇されました。Xさんが訴訟を提起。

〜 結果 〜

裁判所はザックリ「パートへの変更は不利益取り扱いじゃん。ダメよ。無効。んで解雇は無効ね。バックペイ払いなさい」と判断。

以下、くわしく解説します。会話部分については認定事実の本質を保ったままお届けしています(フーズシステムほか事件:東京地裁 H30.7.5)

登場人物

▼ 会社

マグロの卸売業などを行う会社

▼ Xさん

・女性
・期間の定めがない雇用
・2度の出産を経て職場復帰するも
・…解雇される

どんな事件か

▼第1子の妊娠・出産

第1子の出産から職場復帰に至るまでの経緯は以下のとおり。

H24.11 第1子を妊娠
H25.6.1〜 出勤せず
H25.7.3 出産 → 出勤せず
H26.4.1〜 職場復帰

▼ 時短勤務を希望したが…

職場復帰後、Xさんは時短勤務を希望したのですが…。

Xさん
「夕方5時ころには帰れる時短勤務をしたいのですが」

社長
「時短勤務をするならパートになるしかないです」

Xさん
「え…(パートになると契約期間アリになって、しかもボーナスが出ないよ)」

Xさんは悩みます。出産直後で転職先を探すのは難しいし、出産で他の従業員に迷惑をかけてるのに転職するのも…という悩みです。

▼ パート契約にサイン

Xさんは悩んだ末、パート契約にサインしました。

▼ 第2子を妊娠

それから約7ヶ月後(H26.11)、第2子を妊娠します。

Xさん
「産休、育休をとりたいのですが」

社長・課長
「認めません」

(裁判所は「この発言、不法行為ね」と認定しています。後述)

▼ 突然の大発表

その4ヶ月後の会議での出来事(H27.3.30)

突如!

社長
「Xさんは5月20日をもって退職することになりました」

出席していたXさんは驚愕します。「どういうことですか」と聞くと、

課長
「社長が産休を認めないと言っている。あなたが一旦退職して子育てが落ち着いたころにもう一度話し合いたいと考えている」

(裁判所は「この発言も不法行為ね」と認定しています。後述)

▼ 労働局に申し立てる

その後、Xさんは神奈川県労働局雇用均等室にヘルプを求めます。その結果、会社が産休育休を認めることになりました。

■ 相談するところ
産休育休で会社から理不尽なことを言われている方は労働局雇用均等室に駆け込みましょう!

さて、Xさんはそこから産休に入り、出産 → 育休をとります。

▼ 職場復帰

H28.4 職場復帰したのですが、どうやら会社はXさんの復帰を好ましく思っていなかったようです。判決文の事実認定からプンプン匂ってきます。

▼ 弁護士から書面が届く

その4ヶ月後、会社の弁護士から書面が届きます。【パート契約を更新しない】通知です。解雇みたいなもんです。

Xさんは訴訟を提起。

裁判所の判断

Xさんの勝訴です。裁判所の判断はザックリ以下のとおり。

・パートへの変更は不利益取り扱いにあたる
・育児休業法23条の2に違反している
・パート契約は無効
・なのでコレは解雇。そして解雇も無効
・もろもろ払え

▼ パート契約への変更はダメ

育児休業法は「時短勤務を希望した人を不利益に取り扱っちゃダメ」と言ってるんです

育児休業法23条の2
事業主は、労働者が前条の規定による申出をし、又は同条の規定により当該労働者に措置が講じられたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

裁判所はザックリ「パート契約は契約期間アリになって、しかもボーナスも出ない。なのでXさんにカナリ不利益に変更されている。なので無効」と判断。

Q.
Xさんはパート契約書にサインしてますけど、それでも無効になるんですか?

A.
裁判所は「Xさんの自由な意思でサインしたとはいえない」と判断しました。なので無効になりました。理由は、ホントはパートにならずとも時短勤務はできたのに社長が「時短勤務するにはパートになるしかない」と言ったことなどです。サインせざるを得ない状況に追い込まれた場合は無効にできる可能性があります。

▼ サインしちゃダメ!

今回はサインしても無効になりましたが、これは例外的です。サインするとだいたい負けます。なので「何で私がこんな仕打ちを?」と感じたら、サインする前に労働局雇用均等室に駆け込みましょう。

ほんで、なんぼ?

一部抜粋すると以下のとおり。

▼ バックペイ

バックペイとは【解雇された日から → 訴訟になって → 判決が確定する日までの給料】のことです(民法536条2項)。今回のケースでは約1年8ヶ月のバックペイ(月額約21万円)

もし裁判が4年続けば、4年分の給料がもらえます。働いていないのに。

Q.
転職してしまった場合は、どうなるんでしょうか?

A.
転職したとしても基本、6割の給料をもらえます。ただし「元職場に戻る意思がある」と認定できる期間分だけです。裁判官が「もう戻るつもりないよね」と認定した時点以降はもらえません。でも、かなりデカイですよね。会社からすれば衝撃です。

▼ 損害賠償

50万円

・産休育休を認めません発言
・会議での「Xさんは退職します」発言など

 事実上、退職を強要された

あとは有給休暇を請求する権利などが認めらています。

基礎知識

妊娠・出産・育児を理由に会社は不利益に取り扱っちゃダメなんです。

妊娠出産 男女雇用機会均等法9条3項
育児休業 育児介護休業法10条
時短勤務の申し出 育児介護休業法23条

詳細を解説すると爆大な量になるのでググってみて下さい。

ほかの裁判例

今回は女性のケースですが、育休をとった【男性】を不利益に取り扱った事件もあります。裁判で男性が勝訴してます。事件の概要は以下のとおり(医療法人稲門会(いわくら病院)事件:大阪高裁 H26. 7 .18) 

男性看謹師が3ヶ月の育児休業を取得。次の昇給時に本人給の昇給はあったが、職能給については昇給が行われなかった。裁判所は以下の支払いを命じました。

・給与とボーナス
  8万9040円
  (昇給していていればこれだけもらえてたよね)

・慰謝料
  15万円
  (昇格試験を受験させなかったことについて)

さいごに

日本の少子化ヤバイ!ということで育休取得が推進されています。でも、オラオラ中小企業に浸透するにはかなり時間がかかると思います。

▼ 相談するところ

なので、会社が産休育休に理解を示してくれなければ労働局雇用均等室に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)

今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
webメディアで皆様に知恵をお届け中。「こんなこと解説してくれや!」があれば、下記URLからポストお願いします。
 https://hayashi-jurist.jp(←プロフィールもコチラ)
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