国産石けん「赤箱」で有名な牛乳石鹸共進社株式会社(以下、牛乳石鹸)。1909年の創業以来、肌と心、そして環境にやさしい製品を提供している。
そんな牛乳石鹸は10年以上にもわたりアスリートをサポートするプロジェクトCOWsportsを運営している。COWsportsではスノーボードやスポーツクライミングなど日本ではまだまだマイナーな競技のアスリートたちをサポートしている。今回は「ずっと変わらぬやさしさを」の理念のもと、選手を支え続ける信念とブランディング戦略に迫る。
宮崎清伍氏
牛乳石鹸共進社株式会社
コーポレートコミュニケーション室室長
「COWsports」誕生秘話
COWsportsは、牛乳石鹸がアスリートをサポートするプロジェクトである。これまでに2022年北京冬季パラリンピック代表のスノーボードの岡本圭司選手や東京五輪で銅メダリストを獲得したスポーツクライミングの野口啓代選手などを迎え、スポーツに励む「頑張る人」を応援してきた。
これらの競技は近年注目を集めつつあるとはいえ、日本ではまだまだマイナーなスポーツ。野球やサッカーといったメジャースポーツと比べれば、市場規模はどうしても小さくなってしまう。企業である以上、スポンサー活動により大きい費用対効果を期待するのは自然な思考。そんな中、あえてマイナースポーツを支援するのは何故なのか。
牛乳石鹸共進社株式会社コーポレートコミュニケーション室室長の宮崎さんに話を聞いた。
——COWsportsが始まったきっかけって何なんでしょうか?
2014年にプロスノーボーダーの岡本圭司選手と契約したのがきっかけです。当時「赤箱」ユーザーの年齢層が60代~70代と高齢化してて、売上も最盛期に比べて1/10ほどに落ち込んでいたんですね。基幹ブランドである「赤箱」をそのままの売上にしとくのは駄目じゃないかという話になって。社内でいろいろな「赤箱」再生プロジェクトが生まれました。
その中で議題になったのは「赤箱」は何を以て「赤箱」なのかということ。弊社の固形石けんは釜だき製法(けん化塩析法)で作っています。牛の油脂を用いて手間ひまをかけて作り、肌あたりがやさしいというのが最大のウリ。
たとえば洗顔に良いと世間で思われている成分を新たに配合した時、それは「赤箱」と呼べるのか。香りやパッケージが同じなだけの別の石けんになるんじゃないか。
だったら製品を新しく作り直すよりは、今の「赤箱」の魅力を若い人たちに再PRしていこうということで始まったのがCOWsportsです。
——スポーツを通して、石けんの魅力を伝えるところから始まったんですね。
スポーツと石けんは相性がすごく良い。シャワーを浴びる時に絶対使っていただけますから。特にスノーボードの場合は会場がゲレンデなので、お客さんが家族連れでいらっしゃる。そこで大会をやることで、「すごい選手のスポンサーをやっています」ってことがたくさんの人の目に触れる。
業界自体をもっと盛り上げていくためには選手だけでなく競技そのものにも注目してもらうために大会の運営と選手契約は必ずセットにしたい。
特にマイナースポーツであれば、それだけで選手本人にもファンの方にも有り難がってもらえて、信頼を獲得できますから。
——最初がスノーボードだったのは、宮崎さんの個人的なご縁だとお伺いしましたが。
元々、岡本選手が20歳くらいの時に1回出会ってるんですよ。当時僕がいたスノーボードサークルで、駆け出しのプロだった岡本選手にインストラクターをやってもらって。そこからはちょっと疎遠になってたんですけども、僕が30歳になって今のマーケティングプロモーションの部署に配属になった時に声をかけました。
スノーボード・岡本圭司選手
——選手のスポンサーというのは具体的にどのようなサポートをされているのでしょうか?
基本的にはお金です。お金があれば選手はアルバイトを減らして競技に集中できる、そういうのは結構大事ですから。
うちはスポンサーにしては珍しく、あんまり口出さないですよね。お金だけ出して口出さない。こういうメディアに出てほしいとか、こういう活動しろとか、そういうことは全然言わないです。でもその結果、選手が自発的に牛乳石鹸の良さを伝えてくれるように思います。