医師の労働時間は非常に長くなりがちで、心身のバランスを崩してしまう医師が増えていることが社会的に問題視されています。
2024年4月から、勤務医の労働時間について新たな規制が適用されます。勤務医の方、および勤務医を雇用する医療機関経営者の方は、新しい労働時間規制の内容を正しく理解しましょう。
本記事では、2024年4月から施行される、勤務医の労働時間に関する規制のポイントを解説します。
1. 2024年4月以降、勤務医に適用される労働時間の上限(A水準)
労働基準法では、労働時間の上限を原則として「1日当たり8時間・1週間当たり40時間」と定めています(=法定労働時間、労働基準法32条)。
法定労働時間は勤務医にも適用されますが、法定労働時間を超える労働(=時間外労働)については、労使協定(36協定)を締結すれば特に上限なく認められていました。
また、休日労働(=労働基準法によって本来付与が義務付けられた休日における労働)についても、36協定を締結すれば、特に上限なく認められていました。
2024年4月以降は原則として、勤務医の時間外労働の上限時間が、通常の労働者と同様の「月45時間・年360時間」となります。
なお、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に必要がある場合には、36協定に定めた特別条項に従うことを条件として、上限時間を超える労働を命じることができます。
ただしこの場合も、時間外労働および休日労働の合計時間は、原則として月100時間未満かつ年960時間以内に抑えなければなりません。
年960時間の上限時間は「A水準」と呼ばれており、勤務医に対して原則的に適用されます。