コンテンツの磨き込みが不十分だった?
実はグノシーのようなモバイルニュースアプリ、キュレーション系ニュースサイトの需要そのものは高まっています。
市場調査を行うICT総研によると、2020年のモバイルニュース・ニュースサイトのユーザー数は9,113万人。年間200万のペースで利用者は増加するとの予測を出しています。
しかし、グノシーの利用率は高くありません。2割程度に留まっているのです。トップはYahoo!ニュースで63.5%、次いでスマートニュースが56.2%と続きます。
※ICT総研「2021年 モバイルニュースアプリ市場動向調査」より
この調査では提携媒体数、掲載記事数も比較していますが、グノシーの提携媒体数は427。スマートニュースの3,000と比較すると、圧倒的な差が生じています。必然的に記事数も少なく、スマートニュースの5%程度しかありません。
株価を支えるインドのユニコーン
グノシーは中期目標として時価総額1,000億円を掲げています。しかし、現在は200億円にも達していません。基幹サービスであるニュースアプリの収益力向上に向けたビジョンや戦略を見いだせていません。
現在、力を入れている事業が2つあります。1つは2019年に完全子会社化したゲームエイト。もう1つがインドの決済サービスsliceです。
グノシーは2023年12月に経営体制を刷新しました。西尾健太郎氏が代表取締役社長に就任したのです。元社長の竹谷祐哉氏は取締役に降格しました。
西尾氏はゲームエイトの創業者。買収後も代表を務めていました。ゲームエイトは2023年6-11月の売上高が10億円程度で、グノシーの23億円と比べると規模は大きくありません。しかし、2億円もの営業利益を出しています。利益率は21.2%と、極めて収益性の高い事業を行っています。
ゲームエイトは、日本最大級のゲーム攻略メディア。ゲームは日本における数少ない成長産業の一つで、内容が複雑化しているために攻略情報の需要はあります。
sliceはインドのユニコーン企業の一つです。グノシーは17%程度を出資して持分法適用関連子会社化しています。sliceはインドを代表する決済サービスで、ユーザー数は1,500万を超えています。評価額が10億ドルを超えるユニコーンと呼ばれる会社の一つです。グノシーの株価を維持している存在でもあります。
成長著しい会社に投資をして大成功したのが、ソフトバンクグループ。アリババに出資をし、20億円が14年で4000倍に膨れあがったと言われています。ソフトバンクグループは2022年に入って四半期で3兆円を超える大赤字を出しましたが、アリババ株の売却で急場をしのぎました。
グノシーが、ソフトバンクグループのような大逆転を狙っている可能性は高いでしょう。しかし、ウィーワークのようなユニコーンが瞬く間に倒産の憂き目にあうのも事実。グノシーは本業と投資のはざまで難局に立たされていると言えるでしょう。
取材・文/不破聡