Panasonicから2023年2月に発売された食洗機「SOLOTA(ソロタ)」。コンパクトサイズでありながら、しっかりとした洗浄力を誇る同製品は、発売当初計画比の2倍を売り上げているという。食洗機の便利さをより多くの人に知ってもらいたいという想いから開始した、定額利用のサブスクリプションサービスも人気だ。
今回は、パナソニック株式会社 マーケティング総括 国内マーケティング課 食洗機商品課水嶋理子さんに、通常の食洗機との違いやこだわり、異例となった開発時の秘話を伺った。
*本稿はインタビューから一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。
若い世代に食洗機の魅力を伝えたい!『SOLOTA』が誕生した背景
はじめに、同製品の特徴について水嶋さんは次のように語った。
「SOLOTAは、一人暮らしのキッチンに置きやすいコンパクトサイズの食洗機です。一人暮らし世帯を家電の技術でアシストしたいという想いを込め、『ソロ』と『テクノロジカルアシスタント』を組み合わせた商品名にしました。SOLOTAは、ほぼA4ファイルサイズの設置面積があれば置ける、業界最小設計です。一人暮らしでよく使う食器6点を、強力水流でしっかり洗浄します」。
今回の開発は、ターゲットやペルソナも決められていない、まっさらな状態からのスタートだったと水嶋さんは振り返る。
「社内で『今ある商品の形態にとらわれず、幅広く商品を考えてほしい』という要望がありました。開発チームは、さまざまな部門に所属する20~30代の若手メンバーを中心に構成されました。従来は、部門ごとに役割を担って開発が進められますが、今回はデザインや設計、マーケティング、品質などさまざまな業務に携わっているメンバーが集まって企画・開発を進めていきました」
食洗機の普及率について、欧米では普及率が7割程まで進んでいる国や地域があるのに対し、日本はわずか3割程。新しい食洗機の開発背景には、「日本の食洗機普及率を上げたい」という想いがあったと水嶋さんは次のように続ける。
「食洗機を一度使ってもらえれば、食洗機に興味がなかった人でも良さを理解してもらえると考えています。なるべく早い段階で魅力を体感してもらうことで、生涯のパートナーとして、ライフステージに合わせて使用してもらえると思い、若い世代へアプローチすることに決めました」
食洗機に対し「ランニングコストがかかる」「設置が大掛かりで大変そう」といったイメージを持つ人も少なくない。SOLOTAは、そうした懸念点を払拭した商品だと、水嶋さんは説明する。
「SOLOTAはタンク給水式で、分岐水栓の取り付け工事が不要です。タンクに水を入れ、その水で洗浄する仕様なので、購入した日からすぐにお使いいただけます。また、SOLOTAの1回のランニングコストは、電気代、水道代、洗剤代などを合わせて10円ほど。大切な自分の時間をお皿洗いに取られてしまうことを考えると、コスパの良さを感じていただけると思います」
コンパクトな点から、「従来のものと比べ、洗浄力が劣るのでは?」という質問も多く寄せられるという。
「SOLOTAは、当社が販売するファミリー用卓上食洗機と同等の洗浄力を持っています。従来通り、高温の水や食洗機専用洗剤の高い洗浄力、食洗機ならではの強力水流を備えており、実は手洗いよりも綺麗に洗えるんです。SOLOTAは、洗浄と同時に除菌もできる『ストリーム除菌洗浄機能』を搭載しているので、手洗いでは実現できない洗浄性能の高さを実現しました」
「メンバーの実体験」から生まれた、若年層に寄り添ったこだわり
開発は、ターゲットとした若年層に近いメンバー自身の食生活やライフスタイルの見直しから始まったという。
「メンバーへの調査から、一人暮らしをする若年層の食生活は、コンビニやスーパーの惣菜を取り入れた『中食』がメインであることがわかりました。他にも生活の中で使用する食器の点数が少ないという実体験ベースのデータが見えてきたんです。それらの仮説を検証するため、1,000人以上の方にユーザー調査も行いました」
ユーザー調査から、一人暮らし世帯が食洗機を導入する際にポイントとなるのは「食洗機のコンパクトさ」だとわかったという。
「今回の開発では、一人暮らし世帯のキッチンの広さに関する統計データの利用はもちろん、一人暮らしをするメンバーの自宅での調査も実施しました。靴箱などを使って食洗機の大きさを想定し、メンバーの自宅で、食洗機を置いても作業スペースの確保が可能かなどの検証をしたんです」
一人暮らしに必要な洗浄機の容量を確保しながら、コンパクトさを実現するのは決して容易なことではない。開発途中には、技術担当チームから「こんなにコンパクトな食洗機が本当に作れるのか」という声も挙がったという。
「今回の開発では、『必要最低限の容量の確保』と『一人暮らしのキッチンに設けるコンパクトサイズ』という商品の軸を意識しました。そこがブレると、中途半端な商品になることを懸念し、最後まで食器点数と商品のサイズ感にはこだわりましたね。食洗機の製造には、たくさんの部品が必要です。今回はタンクを食洗機内に収めなければならないハードルもあり、コンパクトさを実現するのは簡単ではありませんでした。技術担当チームの努力の結果、部品を小型化することで、食洗機のサイズを極小化することに成功したんです」