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パナソニックが60年のタブーを解禁!A4ファイルサイズの一人暮らし向け食洗機「SOLOTA」開発秘話

2024.02.08

これまで御法度だった「クリア窓の設置」に挑戦

SOLOTAは、「洗える食器棚」というコンセプトを持ったスタイリッシュな見た目も特徴の一つ。食洗機としては珍しく、前面と背面にクリア窓が採用されている。

「食洗機を置いたことがない方にも、圧迫感なく置いていただきたいという想いから窓を設置することにしました。ただ、窓の設置には二つの課題があったんです。一つ目は、部品点数が増えてしまうこと。食洗機は庫内で水を大量に出しながら食器を洗うので、一つの箱で構成した方が、水漏れの心配はなくなります。窓の設置によって構成部品が増えると、その分水漏れのリスクも高まるため、高度な設計が必要となります」

もう一つの課題は、汚れた食器を洗う洗浄水をユーザーに見せることへの懸念だった。60年以上前から食洗機を製造しているPanasonicでは、汚れた洗浄水をユーザーに見せることは御法度とされてきた。

「今回のターゲットである一人暮らしの若年層に取り入れてもらえるデザインを実現するためには、クリア窓が必要だとわかっていました。上司は『ターゲット世代である君たちが言うならやってみよう』と背中を押してくれたので、自分たちの感覚を重視し、開発を進められました。汚い水が見えてしまう一方で、食器がみるみる綺麗になる様子を体感してもらえるのは、良いポイントだと思っています」

食洗機の価値をシンプルに伝えるべく、搭載する機能は一人暮らしにとって必要最小限のものに絞ったという。

「自動で節電する『AIエコナビ機能』や庫内の臭いを抑制除菌する『ナノイー機能』など、当社の従来の食洗機にはさまざまな付加価値機能が搭載されていました。ただ、一人暮らしの生活を考えると、食器の量が少なく、ほぼ毎日同じ食器を使うので、敢えて今回は従来の機能を搭載しないことにしたんです」

食洗機利用のハードルを下げるために「サブスクサービス」も展開

SOLOTAは、新品製品を月額1,290円で利用できるサブスクサービスを展開している。この仕組みを導入した背景について、水嶋さんはこう説明する。

「ターゲットとしている若年層は、頻繁に転居があるなど、生活スタイルの変化が見込まれます。また、SOLOTAの価格も、4万円程と若年層の一人暮らしの方が即決できるものではありません。『ターゲットユーザーの食洗機に対するハードルを極力下げたい』と考え、サブスクサービスを導入しました。SOLOTAを使った約9割の方が、『今後も使い続けたい』と言ってくださっています」

発売当初の売れ行きは、計画比の約2倍、定額利用サービスも計画比の約2.5倍だという。多くの人の手に取ってもらえたことから、想像以上の反響があったと水嶋さんは振り返る。

「お客様からは、『食洗機は贅沢だと思っていたけど、使ってみたらQOLが爆上がりした!』『便利で手放せなくなったので、もっと大きなサイズの食洗機を買った』などの嬉しい声を多くいただきます。ラクをするためにというよりも、自分の大切な時間を有効に使うために、食洗機の導入をご検討いただけたらと思っています」

最後に水嶋さんは、今後の展望について語ってくれた。

「SOLOTAは自炊をしない中食メインの方を想定した商品でしたが、発売後、自炊している方にも購入いただいていることが分かりました。今後は、作り置きを活用して平日の食事を済ませるなど、自炊をしている方も念頭に置いて、PRや商品開発をしていきたいです。また、今回の想定ターゲットは20~30代の若年層でしたが、実際にはご年配のお客様にも購入いただいています。今後は年代にかかわらず、一人暮らしをするより多くの方に向けてPRしていきたいと考えています」(水嶋さん)。

取材・文/久我裕紀

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