医師の働き方改革によって32.2%の医師が収入に「影響あり、減少する見込み」
多くの医師が収入への不安を感じている中で、実際の影響についてはどのように感じているのか。現在の職場に勤務し続けた場合、医師の働き方改革によって自身の収入に影響があるかを聞いた。
最も多かったのは「影響なし、維持の見込み(36.7%)」、次いで「影響あり、減少する見込み(32.2%)」だった。働き方改革によって、3割の医師が収入減少の不安を抱えていることがわかった。
■収入が減少すると思われる要因は「サービス残業が増えることによる収入減少」
医師の働き方改革によって収入に「影響あり、減少する見込み」と回答した方に、その要因を聞いた。最も多かったのは「実質労働時間は変わらず、サービス残業が増えることによる収入減少(58.3%)」だった。
医療体制を維持しながら長時間労働の改善ができるのか、その実現性について多くの医師が不安や懸念を抱えていることが推察できる。
■約半数の医師が「医師の働き方改革が、働く場の選択に影響を及ぼす」
医師の働き方改革が、働く場の選択に影響するかを聞きました。「影響がある」「どちらかといえば影響がある」を合わせると50.2%となり、半数の方が自身の職場選びに影響があると考えていることがわかった。
今後、医療機関は働き方改革への対応が十分でない場合、働き手である医師から職場として選ばれづらくなる可能性がある。
■医師の働き方改革後、転職する際に重視したい項目は「当直有無・回数」
医師の働き方改革の後、転職する場合に重視したい項目を聞いた。最も多かったのは「当直有無・回数(31.5%)」だった。
医師にとっては当直や、当直明けの連続勤務が体力的に厳しいという声が挙がる一方、当直の回数が制限されることで収入ダウンへの懸念もあり、当直の在り方が働く場所選びにとって重要なポイントとなることが判明。
医師一人ひとりが求める働き方に寄り添えるような柔軟な勤務体制づくりという難しい課題への対応が、医療機関には求められている。
調査結果解説
メドピア 集合知PF事業部 事業開発部 キャリア支援グループ 玉置 玲奈 氏
リクルートメディカルキャリア 営業ユニットディレクター 高野 潤 氏
勤務医の時間外労働の上限を原則年960時間に規制する「医師の働き方改革」の施行が2024年4月に迫っています。今回の調査によると、医師の働き方改革に対し、3割以上の医師が長時間労働の改善を期待しており、最も期待されている具体的な内容は、「休日・休暇が十分に取れること」でした。
また、実際の時間外労働時間と仕事への満足度の関係を確認したところ、時間外労働時間が短いほど仕事への満足度が高く、時間外労働時間が長いほど満足度が低くなる傾向が見られ、これらの関係が深いことがわかりました。
一方、不安や懸念として最も多かったのは「収入減少が見込まれること」でした。収入への影響は「影響なし、維持の見込み」と回答した方が36.7%と最多で、「影響あり、減少する見込み」が32.2%と続きました。
収入が減少すると思われる要因は「サービス残業が増えることによる収入減少(58.3%)」が最多となりました。医療機関は働き方改革のため対応を進めている最中ですが、多くの業務に当たる医師にとって、時間外労働が減りそうと思えるような対応に至れていない職場もまだ多いことがうかがえます。
また、医師の働き方改革が今後の職場選びに影響があるか聞いたところ「影響がある」「どちらかといえば影響がある」と回答した方が半数を超え50.2%でした。
医療機関は働き手である医師に選ばれ続ける職場であるためにも、政府が推進する働き方改革にのっとり、人員体制の見直しや人事制度の改革、DX(デジタルトランスフォーメーション)やタスクシフトといった業務改革が必要になるのではないでしょうか。
調査概要
調査方法/インターネット調査
調査対象/「MedPeer」に登録する全国の医師
有効回答数/2045人
集計対象/医師の働き方改革の対象者となる勤務医1782人(回答者のうち、クリニック開業医、一般企業やその他の施設に勤務する医師を除く)
調査実施期間/2023年10月20日(金)~2023年10月25日(水)
調査機関/メドピア
構成/清水眞希