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【ヒット商品開発秘話】発売から約3か月で年間販売目標をほぼ達成!アルコール分3.5%のビール「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」

2024.01.27

製造ギリギリまで最適な醸造条件を追求

 同社には微アルコールビールテイスト飲料『ビアリー』の製造に採用されている脱アルコール製法がある。『スーパードライ ドライクリスタル』の製造では、脱アルコール製法を用いなかった。

 なぜ脱アルコール製法を採用しなかったのか? その理由を玉手氏は次のように話す。

「これは研究所との議論を経ての判断なのですが、どうすれば『スーパードライ』の味わいをアルコール分3%台で実現できるかを議論した結果、脱アルコール製法を使わない方が理想に近い味が実現できるという結論に達しました」

 したがって、開発の焦点は最適な醸造条件を追求することになった。温度や原材料配合比率などといった点を細かく変えながら、試験醸造を繰り返し実施。2年近く開発に時間を要していることもあり、玉手氏も数えきれないほどサンプルを試飲したという。

 アルコール分を下げても、『スーパードライ』のおなじみの味は守らなければならない。低アルコールは水っぽくなってしまいがちになるので、これを避けるために最適な醸造条件を追求し続けた。

 研究所がこだわり抜いて最適な醸造条件を追求したことにより、ドライクリスタル製法が完成。冷涼感が特長のドイツ産ホップ「ポラリス」を一部使用したほか、『スーパードライ』よりも発酵度を上げた高発酵度醸造を採用した。

『スーパードライ ドライクリスタル』は『スーパードライ』より早くコクが感じられ、キレも早く訪れるようして口の中に長く残らないようにした。コクとキレがともに早く感じられるようにすることで、アルコール分が低くても『スーパードライ』らしい味わいが実感できるようにした。

次世代感や未来感が感じられるプロモーション

 発売に合わせ同社は、最新テクノロジーを駆使したプロモーションを展開することにした。

 まず画像生成AI『Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)』を使ったオリジナル画像作成サービス「Create Youe DRYCRYATAL ART」を商品発売前の2023年9月から実施。ブランドサイトから自身の画像と任意のテキストをアップロードすると、オリジナル画像を生成できる。「水彩画風に」「アニメ風に」といった指定をすると、その通りのイメージで画像をつくる。同年11月に終了したが、数万人が利用。生成された画像がSNS上でシェアされた。


「Create Youe DRYCRYATAL ART」で生成できる画像例。場所やその時の気分などに加えて、「水彩画風に」「アニメ風に」といった指定をすると、アップロードした画像を『Stable Diffusion』が指定に合わせて加工してアート化する

 また、発売開始と同時にAR(拡張現実)技術を使って『スーパードライ ドライクリスタル』の缶体でバンダイナムコンターテインメントのゲーム『パックマン』がプレイできる「DRY CRYSTAL×PAC—MAN」を開始。缶体にスマートフォンをかざすと『パックマン』のプレイ画面が映し出されて遊べるようになっている。2024年に入り終了したが、これも数万人が遊んだという。


『アサヒスーパードライ ドライクリスタル』の缶に映し出される『パックマン』のプレイ画面

 販促で最新テクノロジーを駆使したのは、玉手氏がデジタル部門のキャリアが長いことが関係している。現在の商品開発部門に異動してから、機会があれば最新のデジタル技術を駆使した販促を実施したいと考えていたという。玉手氏は次のように話す。

「ひと目見たときに、次世代感や未来感を肌で感じてもらえ、『ワオ』と思ってもらえるものを実施しようと思いました。とくに『パックマン』は少し先の未来を表現することができたと思っています。プレイしていただいた人のアンケート調査でも、多くの人が新しいものだと感じ取ってくれたようです」

 いずれもプロモーションとしては既視感がないもの。2024年もこのようなプロモーション実施する予定であり、今後に期待してほしいという。

“やらなければいけないことが多い人”も支持

 ユーザーからは「飲み過ぎてはいけないときに飲みやすく、生活にうまく取り入れることができました」といったお礼の言葉をいただくことが多いそうだ。

 そして仕事や忙しい人や家庭の主婦など“やらなければいけないことが多い人”からも高く支持されている。食事をつくった後ビールを飲んでしまうと後片付けが面倒臭くなってしまいがちだが、「『スーパードライ ドライクリスタル』だと飲んだ後でも動ける」と話す人もいたという。

 味については「『スーパードライ』と変わらない」と評価する向きが多い。「3%台なのによく味をまとめてくれた」といった声がユーザーから聞かれている。かなり軽いと思いつつ飲んでみたら、しっかりした生ビールの本格的な味わいがするところに、好感が持たれているようである。

取材からわかった『アサヒスーパードライ ドライクリスタル』のヒット要因3

1. 我慢せず飲める

 やりたいこと、やらなければならないことがあると、これまではビールを飲みたくても我慢して、ノンアルコールビールやビールテイスト飲料を選ぶことが常であった。アルコール分3.5%は飲んだ後もやりたいことに時間を割きやすく、我慢せず飲めるようになった。

2.『スーパードライ』と変わらない味わい

 アルコール分を単に低くするだけだと水っぽくなるなど味わいが落ちてしまうが、最適な醸造条件を追求し、独自の製法を確立。『スーパードライ』らしさを追求した味わいを実現し、飲むと高い満足度が得られる。

3.既視感のないプロモーション

 最新の生成AI技術やAR技術をプロモーションに活用。これまでほぼ見かけることがなかったプロモーションを展開することで注目を集め、商品のことを知ってもらえる良い機会にすることができた。

 発売されてからまだ3か月ほどしか経っていないが、『スーパードライ』とのカニバリについては、今のところ当初試算よりも低い結果だという。

 したがって、現状では他ブランドのビールのユーザーを多く獲得できていると思われる。想定したターゲットにうまくハマり、新たなユーザーを獲得できた格好だ。

ブランドサイト
https://www.asahibeer.co.jp/drycrystal/

文/大沢裕司

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