DAOの運営スタンスは? これまでとはどう変わる?
Web3.0は企業にとっても大きな変化が生じる。従来のコミュニティのように中央集権型ではないことから、コミュニティ運営の際にはスタイルや考え方を変えなければならない。
運営企業はどのような考え方やポリシー、スタンスに転じる必要があるか。
本間氏は「参加メンバーの意見や関心をつなぐ“ファシリテーター”としての立ち回りや運営のスタンスを持つことが重要」と言う。
「DAOは分散型自立組織を指しており、中央集権型組織との対比で紹介されることが多いと思います。どちらも集団・組織という点では共通しており、集団や組織を運営するために、適切な管理が必要といった点では違いはありません。
しかしDAOは地縁をベースとした参画・離脱の自由度が低い閉鎖的な『コミュニティ(共同体)』というよりも、共通の関心や目的をベースとした参画・離脱の自由度が高く開放的な『アソシエーション(組合・結社)』に近いです。つまりアソシエーションとしての集団・組織の特徴を意識すると、運営スタンスや考え方のイメージが捉えやすくなるかと思います」
DAO運営を成功させるためのポイント
企業が今後、DAO運営を行う際、成功のために必要なことはどんなことか。本間氏に尋ねたところ、DAO運営の中心的な役割として「コミュニティマネージャー」という新しい職種が重要だという。
「コミュニティマネージャーはDAOに特化した職種ではありませんが、その役割を果たすことがDAOの成功を左右すると考えます」
コミュニティマネージャーを中心として、企業はどのような点を意識すれば良いか。本間氏は次の3つを挙げる。
1 透明性のある情報発信
「DAOは、取引履歴がブロックチェーン上で公開され追跡可能であり、この透明性により参加メンバー間での信頼が築かれます。そのため、健全な投票や意思決定を行うための、オープンな情報発信・開示や意思決定のプロセスを公開することが不可欠です」
2 メンバーのエンゲージメントを促す仕掛け作り
「DAOは共通の興味・関心をベースとした組織・集団であるため、その興味・関心が継続しないと持続的な組織運営が実現できません。
そのため、メンバーが積極的に運営に関われる仕掛けや仕組み作りなどを通じてエンゲージメントを促すことが重要です。具体的には、メンバーからの提案を推奨する制度、オープンな議論を実現する場の提供、意見や有望を集約する仕組み、インセンティブの付与などが考えられます」
3 意図せざる結果を受け入れる柔軟性
「参加メンバーによりさまざまなアイデアが生み出され、新しいムーブメントを起こしていくことが理想です。そのため、即座に状況を判断し、思いがけない結果にも柔軟に対応する運営が重要となります。
予測不能な展開を受け入れ、それを成長の機会ととらえることで、DAOの魅力が最大限引き出されるでしょう」
DAOはその目的によって可能性は無限大。新しいムーブメントが生み出されるのには大いに期待できる。一方で、運営側としては未知なるコミュニティでもある。今後、さらに成功事例が増えることで、ますます最適化された形で広がっていくだろう。
【取材協力】
本間 優太氏
株式会社ベルテクス・パートナーズ
執行役員 パートナー
国内コンサルティングファームを経て、ベルテクス・パートナーズに参画。現在はDXおよび新規事業支援サービスの責任者として、数多くのプロジェクトに携わっている。小売、総合家電メーカー、官公庁、インフラ会社、建設、Sier、メディア等の多様な業界の案件を手がけており、新規事業策定からデジタル&テクノロジーの知見を活かした実行推進まで、一気通貫での支援が強み。
【参照】
山古志住民会議note
SOKO LIFE TECH 「Web3タウン 岩手県紫波町の取り組み 2023年4月」
文/石原亜香利