Web3.0時代に向け、企業は従来の中央集権型からユーザー主導の民主的なコミュニティの運営を始めようとしている。これまでのスタンスからどう転じるべきか。また成功のポイントは? NFTやブロックチェーンなどのWeb3.0領域でもビジネスのコンサルティングの実績を持つ株式会社ベルテクス・パートナーズのコンサルタントに聞いた。
DAOとは? 新たなコミュニティを支える主な技術
「次世代インターネット」といわれるWeb3.0。透明性が高いオープンな分散型ネットワークの総称だ。そのWeb3.0を形成する仕組みの一つが「DAO」だ。
DAOとは 「Decentralized Autonomous Organization」の略称で、日本語では「分散型自律組織」と呼ばれるコミュニティの形態の一種。ブロックチェーン上で参加メンバー全員が協働して管理・運営する組織を指す。
DAOが結成される目的はさまざまだが、共通するのは組織を統率する中央管理者の立場にある人物が存在しないということ。DAOでは参加メンバー全員が平等に権利を持ち、民主的に意思決定を行い、運営して行くのが特徴だ。
同社のコンサルティング事業部 執行役員 パートナーの本間優太氏によると、DAOを支える主な技術には次の3つがあるという。
●ブロックチェーン
取引記録を分散的に処理および記録する台帳技術の一種。管理者がいなくても取引や意思決定の改ざんを防ぎ、透明性を確保できる。
●スマートコントラクト
一定の条件を満たした際に、あらかじめ定めた契約内容が自動で実行される仕組み。管理者がいなくても効率的に取引を実行できる。
●ガバナンストークン
意思決定に参加する権利を付与するトークン。管理者がいなくても組織の意思決定や運営が可能。
DAOの代表的な国内事例
すでにDAOの国内事例は複数生まれている。
例えば新潟県長岡市の山古志地域(旧山古志村)の活性化を目的とする山古志住民会議によるDAOプロジェクトは有名だ。
山古志は、かつて新潟県の中山間地域にある小さな村だったが、市町村の合併後、現在は長岡市の一部となっている。2004年の中越地震によって壊滅的な被害を受け、当時は2,000人以上いた地域住民は現在、800人を下回っている状況だ。存続の危機に際して、中越地震を契機に山古志住民会議が発足した。
やがて世界で初めてデジタル住民票をNFTで発行するアイデアを生み、実行した。NFTとは「非代替性トークン」と呼ばれるもので、代替不可能なデータのこと。デジタルデータでありながら唯一無二のものと証明できる。
山古志住民会議は、山古志村の一員である証明書として地域の特産品である「錦鯉」をNFTアートに載せたNFTをデジタル住民票とした。同時に、そのNFTアートを保有しているユーザーが参加できる「山古志DAO」を生み出した。
「DAOは、山古志の事例のようなデジタル民主主義を支える仕組みとの相性が非常に良いです」と本間氏。
「山古志DAOの面白い点は、『デジタル関係人口の最大化』を目的に掲げており、必ずしもリアル住民ではないデジタル村民が、村の取り組みに対する投票や予算執行の権限を持ち自治に関わっている点です」
類似事例として岩手県紫波町の事例があるという。
「岩手県紫波町は『Web3タウン』を表明しており、『Help to Earn』と呼ばれる仕組みを介して、行政だけでは手が届きづらい作業、雪かき、草刈り、買い物代行などを、住民同士がトークンを授受することで助け合う取り組みが進められています。このようなローカルDAOやWeb3タウンは、限界集落や過疎地域に世の中の注目・関心を集まることから、行政の枠組みを超えた新しい自治の仕組みとして今後も拡がってくると思われます」