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体調不良の社員に「仕事を選ぶ」権利はあるのか?できない仕事を要求してくる会社を訴えた結果…

2024.01.18

裁判所のジャッジ

裁判所
「会社はXさんに休職期間中の給料を払え(約4ヶ月分)」
「ボーナスカットもダメ。払え」

―― ノーワーク・ノーペイ(働かなかったら給料は出ない)が原則ですが、なぜ今回はXさんは給料をもらえることに?

裁判所
働けなかった原因会社にあるからです。現場監督ができなかったとしても、会社にはXさんができる事務作業があったのです。Xさんは「事務作業ならできます」と申し出ているのに会社はそれを拒んでますよね。なので働けなかった原因は会社にあります。働けなかった期間分の給料を請求できます。正確には以下のとおりです」


職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。

そのように解さないと、同一の企業における同様の労働契約を締結した労働者の提供し得る労務の範囲に同様の身体的原因による制約が生じた場合に、その能力、経験、地位等にかかわりなく、現に就業を命じられている業務によって労務の提供が債務の本旨に従ったものになるか否か、また、その結果、賃金請求権を取得するか否かが左右されることになり、不合理である。


▼ ポイント

Xさんが勝訴したポイントは、

・会社との契約で職務内容が現場監督に限定されていなかった
・「事務作業ならできます」と伝えていたこと
・Xさんが従事できる事務作業が実際にあったこと

です。

この3セットが揃っているのに会社は「事務作業じゃなくて現場監督をせよ」と命じたんです。なので裁判所は「事務作業が実際にあるし、Xさんは事務作業させてほしいって言ってるんだから、それを拒んで休ませた責任は会社にあり。給料払え」と命じました。

難しい法律用語でいうと、Xさんから「履行の提供があった」のに「債権者(会社)の責めに帰すべき事由によって履行の提供ができなかった」ということです(民法536条2項)。こういう場合は会社が給料を払わねばならんのです。

復職をめぐる裁判もチェック

【復職したい社員 vs 退職を宣告した会社】の事件はコチラ

Xさん(社員)
「胃がんになってしまいました」

会社
「1年ほど休職してください」

~ 約1年後 ~

Xさん
「回復してきたので復職させてください」

会社
「無理です」
「休職期間が終われば自動退職になります」

~ Xさんが訴訟を提起 ~

裁判所
「Xさん回復してたじゃん。自動退職は無効」
「約600万円払いなさい(2年分の給料)」
「あと慰謝料も30万円払いなさい」

みたいな感じです。良ければご覧ください。

さいごに

職務内容が限定されていないほうが多いと思うので、もし病み上がりで「●●の仕事は無理だけど、▲▲の仕事ならできる」場合、「▲▲の仕事ならできます」と会社に伝えておきましょう。それが「履行の提供」というものになります。

会社が拒絶してきた場合は、労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。

今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
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