メーカーごとに異なる、折りたたみスマートフォンの販売戦略
房野氏:razr 40のバッテリー持ちはいかがですか。
石野氏:全然問題ないですよ。
法林氏:折りたたみスマートフォンは、閉じている時間が長いので、元々、電池の消費を抑えられるという特徴があります。あと、有機ELディスプレイだから、そもそもバッテリーの消耗が少ない。
石野氏:バッテリーをボディの上下に分けて入れているので、スペースも確保できています。
法林氏:弱点は、防水と防塵性能かな。
石野氏:ただし、razr 40は防塵にも対応しています。Galaxyは砂が入ったりしますが、razr 40のしずく型ヒンジだとほぼ入らないですね。
石川氏:あとは、実際にディスプレイを開閉して、何年実用可能か。
法林氏:だからこその、2年払いですよ。
石野氏:あと、ソフトバンクの保証もあって、年2回無料で修理できる。
法林氏:パーツの供給さえ担保できれ、何とかなりそう。Galaxy Harajukuのように自社ショップを作るとか、キャリアショップ内にリペアショップを作るといった取り組みができるといいですね。
石野氏:Galaxyの折りたたみは、結構、修理が難しいらしくて、実質交換が多い。修理に持っていったら、今まで使っていたディスプレイを新品の筐体にハメて、戻される……なんて状況でした。
法林氏:なんか、臓器移植みたいだね。
石野氏:そうなんですよ。この間、画面の端が割れたので修理に行ったら、ごそっとボディパーツを何点か出されて、そのひとつに基盤を乗せていた。実質、2台目を所有する感覚ですよ。その費用が5000円なので、24万5000円分くらい得した気持ちです(笑) 「Galaxy Z Fold3」の時も、酒の席で落としてディスプレイが割れちゃったんですけれど、修理してもらいました。
石川氏:というか、Galaxy Z Foldを買うたびに毎回、酔った時に落として、修理してない?
石野氏:いやいや、一世代前の「Galaxy Z Fold4」は落としていませんよ。でも、お酒を飲んだら、折りたたみのスマートフォンを使っちゃいけないかも(笑) 雑に扱っちゃうから。
房野氏:とはいえ、折りたたみスマートフォンは今後、売れそうですね。
石川氏:割引との兼ね合いがあるけれど、低価格を維持できるか。折りたたみは使っていて楽しいので、価格次第では売れるはず。razr 40の登場で、ようやく競争力のある端末が出てきたって感じですね。
房野氏:razr 40の売れ行きがよければ、ソフトバンク以外のキャリアでも、モトローラの折りたたみスマートフォンは採用されますかね。
石野氏:ドコモ、auにはGalaxyがありますから、どうなるかはわかりません。
法林氏:Galaxyと戦っていけるかが勝負を分けそうだよね。
石野氏:ただし、razr 40は折りたたみスマートフォンの廉価版です。サムスンがメインストリームではあるけれど、まだ廉価版を発売できていません。噂はずっとありますけれどね。
石川氏:サムスンくらいのメーカーなら、アップルみたいに、型落ちモデルを安く売る可能性はあります。
法林氏:むやみにモデル数を増やしたくないからね。
石川氏:そうですね。廉価版でブランドイメージを落とすくらいなら、1年前のモデルを安く売ったほうが無難だし、部材を長く調達できるので、結果的に価格を抑えることもできます。
房野氏:「Galaxy Z Fold5」、「Galaxy Z Flip5」はSnapdragon 8 Gen 2を搭載していますが、iPhone SEシリーズのように、搭載チップを変えて販売することはあり得ますか?
法林氏:フォルダブルは本体の構造が難しくて、外装だけ交換するのは難しいので、型落ちモデルが自然だと思います。
石野氏:razr 40の価格を安くできたのは、チップにSnapdragon 7 Gen 1を搭載して、カバーディスプレイを小さくするなど、コストカットを徹底しているからです。この安さにサムスンの端末では、1世代の型落ちくらいで対抗できないと思います。
法林氏:モトローラがよかったのは、ハードウエアのスペックを並みよりちょっと上くらいに抑えて、外装をヴィーガンレザーでまとめたこと。一般的なユーザーに使ってもらいたいという意図が、うまく反映されています。
石川氏:折りたたみスマートフォンが響く若い世代は、そこまでハイエンドなモデルを求めていない。razr 40は、ユーザー層が使いたい機能と、販売価格のバランスが合っていると思います。一方で、Galaxy Z Flipは、価格がちょっと高いですよね。
法林氏:だから、ドコモやauはオンラインショップで、型落ちモデルの価格を割り引いて売っています。
房野氏:今後、AQUOS senseなどのミドルレンジシリーズから、折りたたみスマートフォンは登場しますか。
石川氏:日本メーカーの販売台数だと、折りたたみスマートフォンの生産は、正直言って厳しいですよね。サムスンですら厳しいですからね。
法林氏:モトローラやGalaxyを見て、折りたたみスマートフォンが新鮮と感じる若い世代と、今でも3Gケータイを持っている人たちでは、端末の使い方の次元が違う。昔の折りたたみケータイは、結構、扱われ方が荒いし、今の折りたたみスマートフォンを同じ感覚で使うと、壊れる可能性があります。