ヒットIPを保有するKADOKAWAが自前のフィギュアブランドを設立
バンダイスピリッツは2018年に「Figure-rise LABO」を立ち上げます。これは、人の肌の質感や表情の細かいパーツなどをプラモデルで表現する研究プロジェクト。同年6月に第1弾商品「ガンダムビルドファイターズトライ」のホシノ・フミナのプラモデルを発売しました。
KADOKAWAは2019年6月にフィギュアブランド「KDcolle」を設立して、自社によるフィギュアの開発に乗り出しました。KADOKAWAといえば、「この素晴らしい世界に祝福を!」「陰の実力者になりたくて!」「とある科学の超電磁砲」「Angel Beats!」などの強力なIPを保有する会社。最近では、「推しの子」をヒットさせました。
バンダイやKADOKAWAのような会社がフィギュアの内製化に乗り出すと、フィギュアメーカーの収益の源泉となる人気IPの利用を封じられることになります。
しかも、大企業は福利厚生が充実して労働環境が優れているうえに、造形師を好待遇で迎え入れる余力があります。事業の要となる造形師を大手企業に奪われることになれば、フィギュアの制作進行に遅れが生じることにもなるでしょう。
壽屋は2023年6月期の決算説明会において、大手企業の参入で市場が拡大する一方、ユーザーの選択肢が増えることでこれまでの急成長に対する反動も考えられるとコメントしています。
消費者にとっては歓迎すべき流れになりましたが、中小のフィギュアメーカーにとっては大逆風が吹いていると言えるでしょう。壽屋は早くもこの逆風に直面しているように見えます。
テレビ朝日との資本提携でIPは創出できるのか
こうした状況の中、壽屋はキャラクターを生み出す「川上」にアプローチをかけました。2023年12月にテレビ朝日と資本業務提携契約を締結したのです。提携の狙いの第一に掲げたのが、オリジナルIP・コンテンツの共同開発及び二次利用の共同開発。IPの確保や創出に動きました。
昨年12月に業務提携を発表
テレビ朝日は壽屋の株式12.6%を取得。筆頭株主に躍り出ることになります。
ただし、この提携によってヒットIPを生み出せる体制が作れるかどうかは未知数。ジョイントベンチャーを設立してIP創出に向けた事業展開の権限を委譲するなど、具体的な取り組みを進めなければ難しいでしょう。
今回の壽屋の出資の受け入れは、フィギュアメーカーの組織再編が始まったと見ることもできます。
取材・文/不破聡