企業が従業員のウェルビーイングに取り組むことは、もはや単なるコストではなく未来への投資
水島先生はこの危機的睡眠負債状況は個人だけでは解決し難いと考え、企業面からも睡眠改善へ向けてのアプローチはできないだろうかと、「企業向け睡眠診断」も同時に立ち上げている。
「いい商品やサービスを安定的に社会へ提供するためには、何よりも働く人が心身ともに健康でなければなりません。人材不足、ストレス社会の現代において、企業が従業員のウェルビーイングを大切にするとは、単なるコストではなく未来への投資であり、重要なミッションだという認識は世界中で広まりつつあります。しかし日本において実際に実行出来ているかいうと、ほとんどの企業が出来ていないのが現状ではないでしょうか? 結局は個人が病院に行けばいいことだよね、ということになってしまう。」
「SLEEPLAB」では、企業が福利厚生として定期的に従業員の睡眠チェックを実施し、何か問題がある従業員がいれば「SLEEPLAB THE STAY」での睡眠分析をはじめ、連携するクリニックへの相談、受診が可能となる。さまざまな不調の初期段階である睡眠障害をケアすることで、働く人たちの生産性を上げ、メンタルヘルスの予防にもつなげるプログラムだ。
加えて、睡眠習慣による休職のリスクは、運動習慣・残業時間・働きがい・食事習慣などによるリスクよりも高く、2.6倍であるという研究結果も。睡眠障害は、休職・離職につながる大きなリスク因子と言える。休職率・離職率を下げるためにも、従業員の睡眠障害を発見し、ケアすることが重要なのだ。
■睡眠に問題がある人とない人にかかる年間コスト差
睡眠に問題がある従業員ひとり当たりへの年間コストは1,025,418円とされる一方、問題のない従業員へのコストは696,774円。つまり、睡眠になんらかの問題が生じている従業員の睡眠を改善することで、年間、約32万円分の生産性がアップ。
(企業の「健康経営ガイドブック」~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第一版:平成28年4月)経済産業省より)
■年間離職・休職イベントに与える原因の多重ロジスティック回帰分析オッズ比
睡眠習慣による休職のリスクは、運動習慣・残業時間・働きがい・食事習慣などによるリスクよりも高く、2.6倍であるという研究結果も。
(志村哲祥(東京歯科大)など(2019)、「睡眠および睡眠リズムの問題は職務要因とは独立した優位な離職リスク因子である」より)
心身の不調を睡眠で予防する。そんな新常識がいま広がりつつある。人生をより豊かなものにするためにも、まずは最高の眠りを体験する価値はありそうだ。
SLEEPLAB 水島豪太医師/2009年に日本大学医学部を卒業。初期研修課程終了後、東京医科歯科大学耳鼻咽喉科へ入局。東京医科歯科大学付属病院や土浦協同病院などの市中病院で研鑽を積み、カリフォルニア大学サンディエゴ校へ留学。2016年7月より医療法人社団則由会AGAヘアクリニックを院長として開院すると同時に水島耳鼻咽喉科副院長に就任。2023年1月にSLEEPLABをスタートさせる。
取材/文 高田あさこ