■連載/石野純也のガチレビュー
フォルダブルスマホ(折りたたみスマホ)というと、どうしても高額なイメージがつきまとっていた。出始めのころは製造コストが高い上にプレミアム感を出す必要性もあり、スペックを最上位モデルと同等にすることが当然だったからだ。特に横折りモデルは25万円前後と高額で、購入するのにはなかなか勇気が必要な価格がつけられている。こうした状況に一石を投じたのが、モトローラの「motorola razr 40/40s」だ。
同機は、縦折りのフリップ型スマホで、いわゆるガラケー(フィーチャーフォン)のように本体中央を折り曲げることができる。開くと一般的なスマホ、閉じると持ち運びに便利なコンパクトサイズになるというのがフリップ型の特徴だ。フリップ型も、15万円前後の端末が多い中、razr 40/40sは12万円前後とリーズナブル。MNPでの割引なども合わせると、2年間の実質価格は1万円を下回る(価格は2023年12月20日時点)。歴代のフォルダブルスマホでは、もっとも手に取りやすい価格と言えるだろう。
ソフトバンクから発売されているrazr 40s。モトローラ直販のrazr 40とハードウエアは共通しているが、ソフトウエアにわずかながら差異がある
一方で、価格とのトレードオフもある。フラッグシップモデルよりチップセットの性能は低く、閉じた時に操作できるアウトディスプレイも同じフリップ型の上位モデルと比べると小さい。メインディスプレイのリフレッシュレートも、抑えられている。安物買いの銭失いになってしまわないのか、不安を感じる向きもあるだろう。そこで今回は、ソフトバンク版であるrazr 40sを借り、実機を試用した。そのレビューをお届けしたい。
レザー調の背面がオシャレで実用的、折りたたむとコンパクトに
リーズナブルなフォルダブルスマホという位置づけのrazr 40sだが、デザインに関しては、上位モデルと比べてもそん色ない出来栄えだ。本体を開くと、シュっと縦に長いスリムなスマホといった印象で、折りたたみ型ゆえに厚みも抑えられている。背面はレザー調に仕上げられており、手に取った時のフィット感は抜群。サラサラとしたガラス素材に飽きた人には、うってつけの仕上げと言えるだろう。
開くと、やや縦長のディスプレイが現れる。縦に長いため、スリムな印象だ
背面にはレザー調の加工が施されている。手なじみがよく、滑りにくい。本体を置く時にも便利だ
また、レザー仕上げは強度にも直結する。ガラス素材の場合、落下時などにヒビやすり傷が入ったり、割れてしまったりするおそれがあるが、レザーであればその心配は少なくなる。破損しないことを保証するものではないものの、傷が目立ちにくいのは利点の1つだ。razr 40s限定カラーとして発売されたパープルも、発色がよくレザー調の仕上げと相性がいい。
一方で、アウトディスプレイが1.5インチと小型のため、閉じた時の見た目はやや古い印象を受けてしまう。これは、モトローラが2023年に発売した上位モデルの「motorola razr 40 ultra」や、サムスン電子の「Galaxy Z Flip5」が、大型のアウトディスプレイ(サムスン電子はカバーディスプレイと呼ぶ)を搭載しているためだ。これらの端末は、閉じた時に片面のほぼ全体がディスプレイになる。
アウトディスプレイは1.5インチと小さめ。折りたたんだ時に全体をディスプレイが占める最新モデルと比べると、やや古く見えるのも確かだ
逆に2022年までのモデルは、アウトディスプレイが小さく、razr 40sのように部分的にしか情報を表示できなかった。こうした進化をたどってきたこともあり、ぱっと見で2022年までのモデルに見えてしまうというわけだ。ただし、これは最新モデルを見続けてきたからこそ抱くイメージ。時系列的に追っているわけでなければ、そこまで気にはならないかもしれない。それだけ、アウトディスプレイを大型化したrazr 40 ultraのインパクトが大きかったということでもある。
フォルダブルスマホの〝かなめ〟とも言えるヒンジはしっかり作り込まれており、折り曲げた際に、ディスプレイの中央部分を水滴のような形で収納する。この機構によって、ディスプレイを均一に折りたたんで、ピタッと閉じることが可能になる。閉じた時にコンパクトなのは、そのためだ。
ヒンジでディスプレイそのものを開閉する仕掛け。曲げる際に、この部分にディスプレイを水滴のような形で収納する
競合他社だと、水滴型に折りたためるヒンジはサムスン電子がGalaxy Z Filp5で採用したばかり。モトローラでは、上位モデルのrazr 40 ultraにも搭載されていた。アウトディスプレイは小さい一方で、折りたたみという機構に関しては上位モデルとそん色ない出来栄え。開閉のスムーズさも、評価できるポイントだ。フォルダブルの売りであるヒンジには、しっかりコストをかけている印象を受けた。
折りたたんだ際にディスプレイとディスプレイがピタリと合い、すき間がないのが特徴だ