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こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
Xさん
「飲み会で上司から抱きつかれました」
「嫌がったのに何回も抱きついてきたんです」
「これをほかの上司に相談したら『酔っ払いにからまれたのと同じである』と言われました」
――裁判所さん、2人のクズ上司に鉄槌を。
裁判所
「チミたち、慰謝料40万円ずつ払いなさい」
以下、分かりやすく解説します。
(データサービス事件:東京地裁 R4.11.2)
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
▼ 会社
業務システム構築のコンサルティングなどをする会社
▼ Xさん(女性)
経営企画室に配属
▼ 上司C
課長代理
▼ セクハラ上司D
部長(システム事業部)
上司Dのセクハラ
――どんなことをされたんですか?
Xさん
「飲み会で上司Dから抱きつかれました。私が嫌がったのに何回も抱きついてきたんです」
――上司Dさん、そうなんですか?
上司D
「酩酊しており記憶にございません」
――政治家かい!裁判所さん、いざ鉄槌を。
裁判所
「慰謝料40万円!」
続いて、上司Cの行為
上司CはXさんからのセクハラ相談を華麗にスルーしただけでなく、ほかにもあり得ない対応を繰り返していました。
▼ Xさんからのヘルプ!を無視
Xさん
「飲み会のあと、抱きつき行為があったことを上司Cに言ったんですけど、『酔っ払いにからまれたのと同じである』『会社はあんなことくらいじゃ動かない』『自分で何とかすべきである』と言われました……」
こいつらはクズですね。セクハラ上司は社内飲み会を無料キャバクラだと考えてますからね。心配な時は録音して参加しましょう。セクハラ発言を獲得できれば慰謝料請求できます。
――裁判所さん、いかがですか?
裁判所
「抱きつき被害を受けたXさんの心情を害し、Xさんの人格的利益を侵害しているので不法行為だ」
▼ ミスの責任をなすりつける
Xさん
「内定者に配布する名刺にミスがあったんです。原因は上司Cが作成したリストに誤りがあったからなんです。なのに上司Cは私に責任をなすりつけて、内定者と社長に謝罪するよう指示してきたんです……」
――とんでもないゴミ上司ですね。
Xさん
「しかも『追加費用はあなたの負担になるかもしれない』というメッセージを送信してきたんです」
――オメーのミスだろ!って話ですよね。裁判所さん、鉄槌を。
裁判所
「Xさんの人格的利益および財産的利益を侵害しており不法行為だ」
▼ 名刺交換をイジる
――どんなイジり方をされたんですか?
Xさん
「内定者懇談会で名刺交換の話になった時に上司Cが『Xさんは昔、名刺交換をする際に相手より下で受け取るということを勘違いして、ひざ下くらいで交換していたんだよ。ありえないよね。このレベルなんです』と言ってきたんです……」
裁判所
「Xさんを侮辱しており不法行為だ」
▼ 年齢を強調する
Xさん
「学生向けのイベントの時に運営会社の担当者が私のことを学生と勘違いしたんです。その際、上司Cが『(Xさんは)いい歳なんです。こちらのほうが申し訳ありません。しっかりしなさい』と言ったんです。そのあと上司Cは私に『あれは本当にマズイ。やばい。いい歳をしてるのに。もう30歳なのに』と繰り返し言ってきました」
裁判所
「Xさんが学生に間違われたことに関してXさんを揶揄しており、人格的利益を侵害しているので不法行為だ」
――ん?上司Cさんが挙手してますね。どうぞ。
上司C
「上の4つすべて、私は言っておりません」
裁判所
「いや、Xさんを信用します。Xさんは自分のカレンダーに記載していたからです。上司Cからの言動すべてではないが主要な部分の記載があるので、Xさんの供述には裏づけがあります」
※ 注意
レアケースです。単なるメモを裁判所が信用することはレアなんです。裁判官は、両名の尋問態度など裁判での一切の事情を考慮して「Xさんの方を信用する」と判断したのでしょう。裁判は裁判官の心の天秤を1ミクロンでも傾けた方が勝ちます。
セクハラ直後に誰かにLINEしておくのも手です。LINEを証拠としてセクハラ認定してくれた裁判はコチラ
ただ、メモやLINEだけで信用してくれるのはレアケースなので、万全を期すなら録音を。
――裁判所さん、上司Cに鉄槌を。
裁判所
「慰謝料40万円!」