米国企業深掘りシリーズ「コストコ」
コストコは1976年、カリフォルニア州サンディエゴで飛行機の格納庫を改造した「プライスクラブ」としてオープンしたことがはじまりです。
その後、1983年にワシントン州シアトルに最初の倉庫店「コストコ」がオープンし、2023年に40周年を迎えたコストコは全世界に871店舗(2023年11月30日時点)を展開し、世界で3番目に規模の大きな小売業者となっています。会員数は1億2790万人を超え、2023年の小売売上高は約2,377億ドルに達しました。
ちなみに日本国内でも北海道から九州まで33の「倉庫店」を展開しており、将来的には50の倉庫店を目指していると考えられています。
そこで今回の米国企業深掘りシリーズは「コストコ」のビジネスモデルと長期投資に向いている理由について解説していきます。
コストコの変遷とビジネスモデル
コストコは小売業界において独自の存在であり、「メンバーシップ型(会員制)倉庫」という特異なビジネスモデルを確立しています。
実はこの発想自体はオリジナルではなく、1955年にカリフォルニア州で事業家ソル・プライスが創業した「フェドマート」が、会員制大型ディスカウントショップに進化し、コストコの創業者ジム・シネガルもかつてそのなかで働いていました。
1976年になるとソル・プライスは飛行機の格納庫を改造した「プライスクラブ」を開業し、1983年にはこれを模倣する形でコストコが誕生しました。
この時点でプライスクラブとコストコは類似点が多いものの、全米の異なるエリアで商売をしていたことから直接的な競合ではありませんでした。
その後、1993年にプライスクラブとコストコを合併して手を結ぶなど、いくつかの変遷を経て、現在に至ります。
コストコのビジネスは非常にシンプルです。会員制の大型倉庫を展開し、会員向けに商品を手頃な価格で提供します。これにより生まれるビジネスモデル上の強みには、以下のような要素があります。
【コストコのビジネスモデル上の強み】
■商品の絞り込みと大量仕入れ戦略
コストコの戦略は、限られた数のナショナルブランドやプライベートブランド品を大量に仕入れ、会員に対して手頃な価格で提供することです。商品カテゴリは多岐にわたりますが、「取り扱う商品数を絞る」ことがポイントです。倉庫店ごとのSKU(単品管理)は平均して4,000点ほどで、これは一般的なスーパーマーケットよりも大幅に少ないです。
■高速な在庫回転
限られた品目で大きな売上を達成するため、商品在庫が非常に迅速に回転します。この迅速な在庫回転により、仕入れ費用を支払う前に商品が売れることがあります。メーカーとの交渉力が強まり、商品をより安く仕入れ、それを会員にリーズナブルな価格で提供することを可能としています。
この2つの強みにより、コストコは非常に薄いグロスマージン(粗利率)で商品を販売しながらも、大きな利益を上げることができるのです。これによって、メーカーと会員、そして自身が持つ強力な好循環が生まれています。