2024年は、トラック運転手の時間外労働に対して年間上限960時間という規制が設けられる。日本の物流に大きな影響が及ぶといわれているが、その真相とは? 同業界における現状の問題点も含めて、2人の識者に話を聞いた。
仕事減につながる長時間の待機は困ります
トラック運転手/YouTubeクリエイター
もこちゃんさん
水産工場でリフトマンとして働いた後にトラックの運転手に。トラックから見た景色や車中泊の方法などをYouTubeなどで発信。もこちゃんチャンネル登録者数は25.2万人。
もこちゃんさんのトレンド予測2024
労働環境が改善するとしたらあくまでも運送大手だけ。
多くの中小企業はさらに悪くなる
規制によって大手がまかなえない仕事が中小に回り、割に合わなくても無理をしてでも運ばなければならない状況が生まれやすくなりそう。規制に関する根本的な見直しが必要。
運転手だけでなく荷主側も問題意識を持つべき
元トラック運転手/フリーライター
橋本愛喜さん
トラック運転手の経験後、日本語教師などを経て渡米。現在は日本の社会問題、ブルーカラーの労働問題を主軸として幅広いメディアで取材・執筆を行なう。
橋本さんのトレンド予測2024
トラック運転手だけでなく荷主至上主義の問題にも
スポットが当たることに期待
上限の960時間を超えた場合、責任を問われるのは運ぶ側だけ。守りにくい一因である長時間待機の問題意識が広がり、荷主側の待たせない努力が進んでほしいが、なかなか難しいところ。
時間外労働の規制でトラック運転手の労働環境はどうなる?
【時間外労働時間】
労使合意で実質制限なし→上限が年間960時間
【休憩など含む拘束時間】
年間3516時間まで→年間3300時間まで
もこ 規制の導入以降、全国に営業所がある大手は、営業所でトラックの運転手を乗り換えるなどの方法で対応する可能性があります。例えば、埼玉の運転手と九州の運転手が中間地の大阪営業所でトラックを交換すれば、両者の負担を減らすことができそう。ただし、規制によって大手がやらない仕事を引き受ける中小では、労働環境は悪化するかも。不安に感じている人は多いです。
橋本 2024年問題は、規制が施行される4月1日からいきなり始まるのではありません。私のSNSには、すでに2024年を機に「稼げなくなる」という理由からトラックを降りるというDMが70件ほど届きました。かつてトラックの運転手は年収1000万円を超えることも十分に可能でした。労働環境が激変したのは、1990年の規制緩和。全国約4万72社の運送事業者が、約6万2000社まで急増し、荷物の取り合いで運転手に荷下ろしさせるなどのサービスが横行しました。その結果、運賃は下がって給与が減り、運転手の負担だけが残されている状況です。規制の導入で仕事の機会が奪われ、さらに給料が減ることになるでしょう。