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米国で電動キックボードシェアサービスのBirdが破産申請、車両数優先主義の限界が露呈か

2024.01.08

シンガポール『oBike』の悲劇

これは電動キックボードではなく自転車のシェアサービスの話だが、筆者はかつてシンガポールの『oBike』破綻騒動を目の当たりにしたことがある。

このoBikeも急激な成長を遂げたことで知られるスタートアップ。自転車1台1台にGPS装置とソーラーパネルが設置され、スマホアプリを見ればどこにoBikeの自転車が停めてあるのかを把握することができた。が、これは言い換えれば街中に無数の自転車が放置されていたということだ。

この時筆者は、アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(いずれも当時の肩書き)の歴史的首脳会談を取材するためにシンガポールを訪れていた。

金委員長の宿泊するホテルの前には、各国の報道陣とシンガポール警察のグルカ人武装警官。その周囲をぐるりと見渡すと、放置された自転車がところどころに点在していた。これは当時隆盛を極めていたシェアサービスの車両である。

世界が注目する米朝首脳会談から間もない頃、oBikeがサービスを停止したというニュースが舞い込んだ。

こうして筆者は図らずもoBikeの最期を取材することができ、その様子を@DIMEでも執筆している。

oBIke騒動は、地球環境に優しいはずのシェアサイクルサービスが実は都市の住環境に悪影響を与えている事実を示してしまった。しかも、運営会社が破綻した後も放置車両はその場に残り続けるという問題も起こしている。

これは電動キックボードのシェアサービスでも変わらない問題で、元陸上選手のウサイン・ボルト氏が経営していた『Bolt Mobility』もほぼ同様の最期を迎えている。

日本のBirdは本家の「アンチテーゼ」

利益を上げる意図で無尽蔵に車両を増やし、地元住民に多大な負担をかけてしまう。

そのような悪しきモデルケースを地で行ってしまったBirdだが、そのアンチテーゼとなっているのは皮肉にも日本のBirdではないかとも筆者は思案している。

Bird Globalがチャプター11を申請した後も、日本のBirdは着実に貸出/返却ポート数を増やしている。そう、日本では自転車や電動キックボードの乗り捨てはできないのだ。

つまり日本で求められるのは「車両数優先主義」ではなく「ポート数優先主義」である。車両数は常にポート数の下位にあるという仕組みであれば、乗り捨てられた車両による都市景観の破壊は発生しづらい。

XのBIRD JAPAN 公式アカウントでは、ポートの周辺環境の魅力を伝える写真が多数投稿されている。いわゆる「地域密着型」の姿勢を強く打ち出していて、これは本家Birdの方針とは全く異なるものだ。

しかし、そうであるが故に本家Birdにつきまとっていた問題は日本のBirdには発生していない。

都市の景観や住環境重視のオペレーションは、地道ではあるが地域に定着する可能性の高い手段である。

【参考】

Bird electric scooter company caps turbulent year by filing for bankruptcy-The Guardian
https://www.theguardian.com/business/2023/dec/20/bird-file-bankruptcy-electric-scooters

米バード、サンフランシスコでの電動スクーターシェアサービスから撤退-Jetro
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/03/3a3a8c8f52b67fd7.html

取材・文/澤田真一

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