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「やらなければ成果はゼロ。やってマイナスが出たとしてもそれは価値あるマイナスになる」PPIH吉田直樹社長に聞くドン・キホーテ大躍進の舞台裏

2024.02.01PR

34期連続で増収増益を維持し続けるのがドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)だ。入社16年で、グループの総売上高3000億円の中堅企業から、小売業第4位となる2兆円に迫る大企業へと成長させたキーマンに、ドン・キホーテ大躍進の舞台裏を聞いた。

吉田直樹氏PPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)
代表取締役社長CEO
吉田直樹
1964年大阪市生まれ。1995年にINSEADを卒業(経営学修士)。マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン、コンサルティング会社経営などを経て、2007年PPIHに入社し、海外事業本部長兼ドン・キホーテ(USA)社長に就任。2012年に取締役、2013年に専務取締役、会長室長、財務、法務、労務、M&Aなど管掌を歴任した後、2019年9月に代表取締役社長CEOに就任した。

「ドンキの舞台で輝いてくれ」創業者の一言で入社を決意

──吉田社長は経営コンサルタント出身と伺っていますが、どのような経緯で、畑違いの小売業を主とする、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)に入社されたのでしょうか。

「創業者の安田(=PPIH創業会長兼最高顧問・安田隆夫氏)とは、コンサルティング会社を経営している時に出会いました。1代で
PPIHを築き上げた経営者として尊敬していましたが、同時に童心を忘れないユニークな人柄にも強く魅かれました。その安田から直々に、『今の仕事より、ドンキのほうがいいよ』と、大変おもしろいスカウト電話を毎晩いただきまして、半ば強引でしたが(笑)、そこまで熱心に誘ってくれるならと、2007年に入社。後に知ったのですが、このスカウトトークで入社した社員は結構多かったようです(笑)。『今までスポットライトの当たっていなかった人こそ、ドンキという舞台で輝いてくれよ』が、安田の決めゼリフ。何よりすごいのはそれを理念として真剣に考えていることです。だからこそ、現場に丸ごと仕事を任せ、自由裁量権を持たせる権限委譲システムができました。これは当社の大きな特徴ですね」

──入社後は、海外事業本部長、ドン・キホーテUSA社長を経て、2012年には取締役に就任。大きな転機となった出来事はありますか。

「私は2015年に小売業で上をいく、セブン&アイ・ホールディングスさん、イオンさんとは特徴の異なる『小売りの第3勢力を目指す』という趣旨の文章を、社内報に書きました。新しい選択肢を消費者に提示することで、当社はこれまで以上の高みに上ることができるという内容です。それを読んだ安田から『これじゃないか!』と言われまして、現在までその目標に向け、大きく舵を切ってきたのです」

「果敢な挑戦」と「速やかな撤退」を常にセットで考え、
変わり続けることを恐れない

吉田直樹氏

大規模な資金調達によって大企業へステップアップ

──当時はどのような業務を担当されていたのでしょうか。

「2010年から財務を担当していました。当時も業績は上り調子でしたが、当社はとにかく喧嘩っ早く、周りに敵が多かったんです。もちろん『ドン・キホーテ』の名のとおり、反骨心を持つことは、創業のスピリッツとして大事なことですし、ベンチャーの姿勢としてはアリだと思います。ただ、世の中は、勢いがある会社だから、資金を出してくれると思ったら大間違いで、役所や金融機関としっかり折り合いをつけないと一定額以上の借り入れができない。これはPPIH入社前のベンチャー企業では知り得ないルールでした。そこで考えたのが、他社の力を活用するレバレッジ戦略。融資利息の低い状況は当面続くと読み、なるべく多くの資金を融通してもらい、借り入れによって、より大きなバランスシート(貸借対照表)を持って勝ちにいくやり方こそ、成長への近道と考えたのです。自力でやっていたら、1年に数店舗しか増やせませんが、大規模な資金調達ができたら、一気に成長できる。これを実現するために、金融機関、金融市場などにも風穴を開けるしかないと考えました」

──思い切った戦略ですが、社内は、どんな反応だったのでしょうか。

「好きなようにやらせてくれましたね。結果として盛大に借りまくり、M&Aも行ない、不動産も取得しました。同時に、いち早くコーポレートガバナンスも整え、守るべきことや変わってはいけないことだけではなく、変わらなければならないこともあるという道筋を、社員と一緒に作っていったんです。財務の全権を任され、中堅の会社から大企業へと成長させられたことで、安田の言った『ドンキは本当にいい会社だ』ということが心底実感できました」

──2019年にPPIHの代表取締役社長CEOに就任された翌年からコロナ禍となりました。この期間に、新たに考えられたことや気づきはありましたか。

「まず自分のやるべきことを改めて問い直し、戦略より先に、従業員の生活を守ることが、自分の仕事であり、責任であると決意を固めました。社長にはできることがいろいろあるとわかったのもコロナ禍です。当社は成果主義で、この時期、ドン・キホーテは単体決算で減収減益でしたから、例えばボーナスも、本来の評価係数を10とした場合、収益率に合わせ、普通は8に落とすのが一般的です。けれどもパンデミックは、自分たちの努力でどうすることもできないですよね。ですから『8に下げず、10のまま評価すればいいのではないか』と、私が提言すれば、それが通ってしまう。これはある種、社長の権力行使で、使い方によってはハラスメントにつながったり、会社を誤った方向に導くなど恐ろしいことでもあります。けれども従業員を守るためには権力行使もやむを得ないこともあると、学んだんです。そして3つ目は『楽観的でいよう』ということ。いつパンデミックが終息するかわからない時に、リーダーが暗くなると全体がさらにどんよりしますから」

吉田直樹氏

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