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サイバーエージェントのメディア事業黒字化の立役者「WINTICKET」の業績が好調な理由

2023.12.29

2023年9月期の利益は21倍に

WINTICKETの流通総額は好調に推移しています。2023年9月期は前年の1.4倍となる3,769億円でした。2022年9月期は2倍に伸長していました。2023年9月期はそれを大幅に上回ったのです。

この事業を運営するサイバーエージェントの子会社WinTicketの2023年9月期の純利益は、前年同期の21倍となる41億3,200万円に跳ね上がりました。

決算公告より

WINTICKETは、窪塚洋介さんとオダギリジョーさんを起用したテレビCMを放映しています。第3弾となる新シリーズの放映を開始したのが2023年9月23日。基本的に広告費はメディアへの掲載や放映されたタイミングで費用を計上します。

第2弾のテレビCMは2022年5月14日に放送を開始しており、2023年9月期はプロモーションコストを大幅に削減できたものと予想できます。

宣伝費を抑制したにも関わらず、WINTICKETの流通総額は1.4倍に増加しました。この成功体験はサイバーエージェントにとって実りの大きいものだったでしょう。コストコントロールを行ってメディア事業の黒字化への道筋が立てられるためです。

インターネット投票の市場規模は8,500億円

WINTICKETがここまで好調な理由は大きく2つあります。1つは公営競技のインターネット投票を取り巻く市況が極めて良いこと。もう1つは競合サービスと比較すると、機能や情報面で優れていることです。

下のグラフは、競輪とオートレースの車券売上額と入場者数の推移です。入場者数は2019年に200万人を超えていましたが、コロナ禍を機に急減。120万人程度まで下がりました。2022年は170万人まで回復しているものの、2019年の水準には戻り切っていません。

注目したいのは、入場者数が減少しているにも関わらず、車券売上額が増加している点。2022年は1兆円を超えました。

※公益財団法人JKA「年度別車券売上額・入場者数」より

その前に車券売上が1兆円を超えたていたのは、1974年から2002年まで。1991年の1兆9,500万円のピークを境に減少へと転じていましたが、コロナ禍で増加するという珍しい現象に見舞われています。

経済産業省は車券売上の増加について、巣ごもりで公営競技の需要が高まったことと、それを支えるインターネット投票の環境が整い、全体を押し上げたとの見解を示しています。

2022年の車券売上1兆908億円のうち、インターネット販売による売上高は8,551億円。実に8割がインターネットを通して取引されていました。WINTICKETはこの特需のど真ん中にいたのです。

※経済産業省「競輪・オートレース業界の現状と課題」

巣ごもり特需の終焉で業界再編が起こる?

インターネット投票サービスは、サイバーエージェントが独占しているわけではありません。楽天やMIXIなどの大手の他、小中規模の事業者が様々なサービスを展開しています。

ただし、WINTICKETのシェアは断トツ。2022年の流通総額は3,082億円。それを車券売上全体に当てはめると、3割程度をWINTICKETが占めていることになります。

WINTICKETが競輪ファンに支持されているのは、膨大なデータを分析した精度の高い情報を提供しているため。AI予想で初心者でも買いやすい他、選手の戦法、周長別成績、天候別成績、時間帯別成績、レース種別成績など、競輪上級者も満足できるデータを揃えています。

サイバーエージェントはインターネット広告が主力の会社で、データ分析は得意分野。最近では、話題のNVIDIAによる大規模なAI開発に必要な「NVIDIA DGX H100」を国内初導入したと発表しました。

今後は更に精度の高い分析ができるようになるでしょう。

注意したいのは、競輪ブームは巣ごもり特需によって引き起こされたものだということ。今後は車券売上の高止まりや縮小が懸念されます。そうなると、小規模なサービスが淘汰される可能性があります。WINTICKETがその受け皿となって、更にシェアを伸ばすことができれば、サイバーエージェントのメディア事業の業績は盤石なものとなるでしょう。

取材・文/不破聡

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