二人世帯向けの住宅が、わずか44時間30分で完成した。2日もかかっていない。しかも、販売価格は550万円という低価格。夢のような話だが夢じゃない。
なぜこれほど低コスト&短時間で住まいが手に入ってしまうのか?それは「3Dプリンターで作られた住宅」だからだ。
手掛けたのは、日本初の3Dプリンター専業住宅メーカー「セレンディクス」。
去年3月に10平米の「serendix10(スフィアモデル)」を完成させると、今年7月には日本初となる二人世帯向けの「serendix50」を竣工。日本発の住宅革命は世界26ヶ国でも紹介され、大きな話題となった。
『車を買い替えるように家を買い替えられるようにしたい』
そんな想いから、夢のような住まいを作り上げたのは、セレンディクスの最高執行責任者(COO)である飯田国大(はんだ・くにひろ)氏だ。
今回、日本初の3Dプリンター住宅が誕生した経緯、そして飯田氏が描く壮大なビジョンについて話を聞いた。
「怒り」から生まれた3Dプリンター住宅が世界を驚かせた
――3Dプリンター専業住宅メーカーを立ち上げた経緯から教えてください。
「弊社はスタートアップ企業であり、その存在価値は課題の解決にあると思っています。ここで言う課題解決とは『怒り』なんです。我々日本人は、住宅に対して特に大きな不満や怒りがあると思っています。長期にわたる住宅ローン、経済的にも時間的にも課題が多すぎて、その課題を解決したく弊社はスタートしました」
――3Dプリンターで家を作るとは画期的です。
「当初はIOT機器で住宅を便利にする程度しか考えていませんでしたがそれではダメだと思い、いかに住宅を効率良く作るかを追求しました。
以前から海外には3Dプリンター住宅があったんですが、それらは単純に壁だけをプリンターで作り、他は人間が作っていた。その結果、納期は半年で値段も3割ぐらいしか安くなってない。あくまでそれは既存住宅の延長線上でしかなかったんです。
我々はゼロベースで住宅を再発明することを目指し、世界で初めて壁だけでなく、屋根まで一体成型で住宅すべてを3Dプリンターで作ろうと考え、実現しました」
まさにそれはセレンディクスが世界で初めてだった。かつてのプリンターの多くは垂直な壁しか作れず、角度をつけた出力はなかなか形にできなかったが、セレンディクスはさまざまな企業との協力のもと屋根まで一体成型可能な3Dプリンター住宅を開発。一躍世界に情報が広がった。