ストランドビーストの生と死
「ストランドビースト」に誕生があるならば、当然、「ストランドビースト」にも死がやってきます。これはヤンセンが対象の「ストランドビースト」から全ての情報を得られた、と感じたときを指します。役目を終えたあと、動かなくなった「ストランドビースト」は、デルフト郊外にあるイベンブルフの丘で静かに眠りにつくのです。しかし、身体の一部が次の「ストランドビースト」へと受け継がれることもあるため、これは自然界同様に、ある動物の死を取り入れるライフサイクルが存在していることになります。
こうした生と死の循環のなかで、「ストランドビースト」の未来には、どのような可能性が秘められているのでしょうか。
ひとつの可能性として、環境への適応性が一層高まり、異なる地域や気象条件においても存続できる進化が考えられます。風の力だけでなく、太陽光や雨水など、さまざまな要素を取り入れることで、より持続可能な生命体としての特性を発展させた場合、さらに抽象的でありながら論理的な形態へと進化するのかもしれません。
おわりに
本展示の印象的であったアプローチのひとつに、すべての作品の写真撮影やSNSによる拡散が許可されていることにあります。各々が撮影し、SNSへ投稿する一連の流れもまた、ヤンセンの繁殖のコンセプトとつながっている、そんな面白さを感じました。
最後になりましたが、未来に向けてさまざまな可能性を表現し続けるテオ・ヤンセンというアーティストに、あらためて敬意を表したいと思います。
取材・文/スズキリンタロウ(文筆家・ギャラリスト)
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/ART/contents/1695106672072/index.html