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現代のレオナルド・ダ・ヴィンチと称される彫刻家「テオ・ヤンセン」とは?

2023.12.10

ストランドビーストの変遷

ストランドビーストの構想は、ヤンセンが新聞のコラムで海面上昇が進むオランダから国土を守るため、砂をほぐして砂丘を積み上げる空想上の生命体について、コラムを書いたことが発端です。

その変遷について、ヤンセンは時代ごとに名前を付けており、ストランドビースト誕生前夜のこの時期を「前グルトン期(1948-1989)」 と呼びます。

その後「グルトン期(1990)」になると、最初のストランドビースト「アニマリス・ヴォルガリス」が誕生します。アニマリスとは、英語の「Animal」とラテン語で海を意味する「Mare」を合わせた造語です。当時は立ち上がることが出来ませんでしたが、「コルダ期(1991-1993)」に入ると結束バンドを採用して強度を得たことで歩くことが可能となりました。この時期に前述した「ホーリーナンバー」を獲得します。

その後「カリダム期(1993-1994)」になると羽を獲得し、「タピディーム期(1994-1997)」ではビーストは同種で群れをなすようになり、風で簡単に飛ばされないようになります。また木材や金属を使用して大きさを追求した「リグナタム期(1997-2001)」を経て、「ヴォポラム期(2001-2006)」になると、ペットボトルによる「胃」が誕生し、圧縮空気を動力としたビーストが誕生します。またプラスチックチューブによって組み合わされた神経細胞によって「脳」を獲得したのが「セレブラム期(2006-2008)」です。さらに進化は止まらず、圧縮した空気で歩行が可能となったのが「スイシディーム期(2009-2011)」です。この作品は、千葉県立美術館での展示の目玉のひとつです。

そして、遂に尾の動きに到達したのが「アスペルソリウム期(2012)」です。これは尾を動かすチューブ3本の押し引きによって、驚くほどしなやかな動きが実現されています。また大きな帆によって、小さな風を動力として動かせるようになった「アウルム期(2013-2015)」を経て、「ブルハム期(2016-2019)」では、ヴォポラム期にみられた横にうねるような動きがさらに進化し、四角形の脚が順番に動くことで、前に進むようになります。

そして、空へ浮かび上がる飛行の時代に突入した「フランタム期(2020-2021)」では、海辺の砂がストランドビーストの下を通り抜けることで、これまで課題であった砂に埋もれることからの回避が実現します。2023年現在は「フィルム期(2021-)」にあたり、さらなる軽量化に成功しています。また脚の代わりにスタビライザーで歩くことが可能となったため、遂に脚がなくなるという進化が続いています。

テオ・ヤンセンのインスピレーションの源泉はどこにあるのか

テオ・ヤンセンというアーティストを考察するなかで、学者としてのヤンセンと創造主としてのヤンセンという2つの顔が浮かび上がります。

たとえば作品名の冒頭の「アニマリス(Animaris)」は学名を連想させる言葉であり、作品全体を学術的に分類する思考はまるで学者のようです。

その一方で「ストランドビースト」のような生命を生み出すきっかけは、どこから来たのでしょうか。実はヒントとなる出来事があります。ヤンセンが画家として活動するなかで、1980年にインスタレーション作品「空飛ぶUFO」を発表します。これはプラスチックチューブで輪を作り、黒いビニールシートで覆ってUFOにしたものをデルフト市内の丘から空に飛ばし、天気の影響で実際よりも高い位置に見えたことから、当時のデルフト市民が大騒ぎし、新聞やニュースになるほどの騒動になりました。

こうした一連の出来事から現在まで、ヤンセンの作品には現実の世界を曖昧にする作用があると同時に、私たちの認知そのものを揺さぶる、新たな視座に満ちているのです。

なにより「空飛ぶUFO」以後に立体作品を作るようになったことから、ヤンセンの才能と方向が定まった大きな出来事だったのではないでしょうか。

こうしたヤンセンならではの探究心が、「ストランドビースト」という、生命体の創造へ着地したといえるでしょう。

とはいえ、忘れてはならないのが「ストランドビースト」は科学に裏打ちされ、職人的な手仕事によって作品が誕生しているということです。これはヤンセンによる作品世界のスケールの大きさによって見落とされてしまいそうですが、制作する上で必要な知識や技術の集積の上で作品が成立しているのです。

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