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「チームを率いるのに必要なのは情熱とデザイン力」生島 淳と伊藤羊一が読み解くスポーツ界に学ぶリーダーの心得

2024.01.08

1 on 1を繰り返すことでメンバーに変化を促していく

チームで特異なOneを作らないと世界で結果を残すことはできない

生島 8月に開催されたバスケットボールワールドカップで、男子日本代表チームがアジア1位になって、パリ五輪出場権を獲得しました。チームを率いるトム・ホーバスHCは、2021年までは女子日本代表チームのヘッドコーチで、東京五輪で銀メダルを獲得しています。トムは男子と女子ではマインドセットが大きく違うって言うんです。女子のWリーグでは外国人選手が認められていないので、日本人選手に点を取る意識がしっかり備わっています。一方外国人選手が認められている男子の場合、Bリーグで得点ランキングの上位はほとんど外国人で占められていたんです。

伊藤 つまり点を取る必要がないんですね。

生島 だからトムは点を取るマインドセットを植えつけるのに相当苦労したそうです。そんな中で今回成功したのは、河村勇輝選手の存在が大きい。彼は小学校の時から点取り屋のままで、今季のBリーグでは10月終了時点で得点ランキングトップ。あとはネブラスカ大学でプレーしていた富永啓生選手も、大学ではポイントゲッターでマインドセットが異なっていた。そういった個人が入ってくることによって、みんなのマインドが変わってきたんです。やはりスポーツは個が粒立たないと、世界で勝つことは不可能なんです。

伊藤 あの、ラグビーではよく「One for all All for one」と言うじゃないですか。それもOneが強くあるべきということなんですか?

生島 2015年までラグビー日本代表のヘッドコーチだったエディー・ジョーンズはこの言葉について「日本人は〝All for one〟を忘れている」とよく言っています。特異な才能を持った人に奉仕することで得点が生まれることに目を向けず、都合よく解釈していると。

伊藤 なるほど。日本人はひとりひとりの個を犠牲にしてもチームのためにがんばる〝One for all〟ばかり重要視する傾向にあると。

生島 そうですね。エディーもそうですし、今回の日本代表を率いたジェイミー・ジョセフHCも、特異なOneを作らないと世界で戦えないというのはもう前提としてわかっています。

伊藤 これはかなり重要な示唆で、今回の対談で生島さんは声を大にして「みんな勘違いしてるぞ」と主張する必要がありますね。言わないと日本人は「ラグビーはチームのために個を犠牲にする」と勘違いしたままです。

生島 やっぱり4年前のワールドカップでは福岡堅樹選手の力が大きかったと思う。彼が輝くようなセットプレーが用意されていたからこそ勝てたんです。今回は正直、そこまでの選手がいなかったと感じました。

1on1は「聴く」と「振り返り」が大事

1on1は「聴く」と「振り返り」が大事1on1は「聴く」ことに徹し、ともに振り返ることで気づきを与える。

トム・ホーバスバスケ女子日本代表に続き男子でもHCを務め、結果を残すトム・ホーバス。 写真:森田直樹/アフロスポーツ

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