連載/ゴン川野のPC Audio Lab
ヘッドフォンアンプ国産ハイエンドが勢ぞろい
中野サンプラザから、ステーションコンファレンス東京へと会場を移した「秋のヘッドフォン祭 2023」が2023年10月28日に開催された。今回の目玉はオーディオテクニカの超弩級真空管ヘッドホンアンプ「鳴神 NARUKAMI」(1320万円)、残念ながら事前の試聴申し込みを失念しており当日は外見の取材のみになった。しかし、これ以外にも本格派のヘッドホンアンプが内外から数多く出品されていた。
私が注目したのは、セパレート型のヘッドホンアンプだ。スピーカーを鳴らすためのハイエンドシステムはパワーアンプとプリアンプがセパレート化されており、さらにそれを進めたモノラルパワーアンプも存在する。しかし、ヘッドホンアンプでは数百万円のハイエンドモデルも一体型だった。初めてのセパレート型の登場は、私の記憶ではMSB「Premier Headphone Amplifier」である。MSBはDACのメーカーでこのアンプは同社のDACと組み合わせることを念頭に置いて製品化された。DACはデジタルプリの役割を果たすためボリュームを搭載しており、ヘッドホンアンプにはボリューム不要というコンセプトから生まれた。もちろん、他社のプリアンプと組み合わせても使える。
今回は日本の3つのメーカーからヘッドホンパワーアンプが出展されており、その音を聴くことができた。セパレートアンプが加わることで、ヘッドホンアンプ選びの選択肢がますます広くなるに違いない。
全段バランス増幅DVAS「Model2」は99万円
「OTOTEN2023」で参考展示されていたDVAS「Model2」が受注生産、99万円で発売される。OTOTENでの主催者の桑原光孝さんのコメントでは、100~150万円を予定とのこと。しかし、若い世代が試聴して100万円なら、私にも頑張れば買えるかもしれませんと言う人が多かったので、その声に応えるため販売価格を99万円に決めたそうだ。
デザインと仕上がりは参考展示されたシャーシと変わりなく高級感あふれるもので、今回はその上に同サイズで試作機のラインプリアンプが重ねられていた。これまた魅力的なペアだが、私はヘッドホンアンプの純粋な音を聴くため参考出品のバランス対応アッテネータとFiio M15のライン出力を接続して試聴。前回の中低域に厚みのある光フォノアンプを使ったアナログシステムと違い、もっとフラットなバランスで音楽を立体的に描いてくれた。音色はややウォームで耳に心地よい。広々とした音場が特徴だ。ヘッドホンアンプ自体に色付けは少なくプリアンプやDACの個性をそのまま引き出してくれるタイプだ。
下が製品のヘッドホンパワーアンプ「Model2」、上は試作機のプリアンプ