ルイガノの日本販売代理店権を取得したあさひ
原価率に開きがある要因は主に2つあると考えられます。1つはあさひが複合的なビジネスを展開していること。もう1つは店舗数に5倍程度の開きがあり、あさひは仕入面で有利なことです。
あさひは、一般店だけでなく中古店も展開しています。売上全体の10%以上がEC販売であり、EC比率が高いのも特徴です。国内メーカーと商品の共同開発も行っています。あさひは自社ブランドの商品に強みも持っており、仕入高の4割は主に中国で生産を委託しているプライベート商品です。
更にあさひはオシャレな自転車ブランドとして知られるカナダの「ルイガノ」の日本総販売代理店権を2017年7月に取得しています。自転車販売業の中でも、多角的な事業展開をしている点はあさひ最大の特徴だと言えるでしょう。
巨大な店舗網を構築しているため、価格交渉力も強くなります。規模が小さい会社に比べて、仕入れ面で有利なのです。
あさひに後れをとるDAIWA CYCLEは、出店攻勢を重ねて店舗網を構築すると同時に、プライベートブランドの商品展開を充実させるでしょう。特に後者は重要な要素になります。
市場が拡大する電動アシスト自転車
実は国内の自転車の販売台数そのものは伸びていません。2013年以降は200万台を下回る状態が続いています。しかし、販売額でみると伸びている領域があります。電動アシスト自転車です。2020年は600億円を超えました。
※経済産業省「ひと言解説 (サービス業・製造業の解説・分析レポート・統計)」より
電動アシスト自転車は単価が高く、需要もあることから魅力的な市場だと言えます。このタイプの自転車はバッテリーの需要が3~4年、10年で買い替え時期を迎えると言われています。一度販売した後、バッテリーの交換や買い替えなどでライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を上げることにも期待ができます。
DAIWA CYCLEは、今年6月にプライベートブランドの電動アシスト自転車6モデルを市場投入しました。ベーシックなモデルを税込み9万5,700円で販売しています
ダイワサイクルオリジナル電動アシスト自転車「e-Fit’z Ⅱ (イーフィッツ2)」
ヤマハやパナソニック、ブリジストンなどのおなじみのメーカーが、同様のモデルを10万円を優に超える価格で販売していることを考えると、安いと感じるでしょう。価格で圧倒的な差をつけ、来店客に自社商品をアピールする狙いがあると考えられます。
DAIWA CYCLEの成長の一番のポイントは、プライベートブランドで電動アシスト自転車のシェアをどれだけ獲得できるかにかかっていると言えます。
業界がDAIWA CYCLEに追随するようであれば、電動アシスト自転車の価格競争にもつながるかもしれません。
取材・文/不破聡