ジャッジ
▼ 地裁
解雇はOK!
〈理由〉
旅費に関する企業秩序を乱した点で信頼関係を大きく損ねており、Xさんは従業員の地位を継続し得ないものとみるほかない。
これに対し、Xさんは控訴。すると高裁の判決は…。
▼ 高裁
解雇ダメ〜。
〈理由〉
・Xさんの不正受給の悪質性は、停職3ヶ月の人とおおむね同程度。
・Xさんを解雇するのは均衡を失する。
・Xさんに懲戒歴がない。
・営業成績は優秀。会社に貢献してきた。
▼ マメ知識
懲戒解雇がOKになるハードルは高いです。以下の条文があるからです。
労動契約法15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
懲戒解雇されると、退職金が出ない可能性大で再就職も難しくなるので、裁判所は懲戒解雇OKとするには慎重なんです。
▼ 懲戒解雇がOKとなったケース
懲戒解雇が認められた事例は、コチラをご覧ください。
■ チャットのやりすぎ
■ 会社の書式を改造、部下のミスを隠ぺい
あと、最近の事件では、会社から高級ウィスキーをパクって懲戒解雇された事件もありました。裁判所は「懲戒解雇OK!」と判断(坂口事件:東京地裁 R4.12.7)。
ほんで、会社が払ったのはなんぼ?
会社はXさんに1685万円超えを払うハメになりました。これはバックペイというものです。解雇裁判に勝てば、過去にさかのぼって給料がもらえるんです。具体的には【解雇された日から → 訴訟になって → 判決が確定する日までの給料】のことです(民法536条2項)。
転職したとしても基本、6割の給料をもらえます。ただし「元職場に戻る意思がある」と認定できる期間分だけです。裁判官が「もう戻るつもりないよね」と認定した時点以降はもらえません。でも、かなりデカイですよね。会社からすれば衝撃です。
今回は以上です。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
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